【FB革命前夜 未来を作る①】ビジネス変えるIoT

2018/02/10 05:00 更新


IoTがビジネスを大きく変える 取り残される前に

 ファッションビジネスが大きく変わり始めた。独特のセンスで商品を作り、良い場所にお店を出せば済む時代は過ぎ去った。企業経営は、ヒト、モノ、カネ。そこに情報が加わって久しいが、情報の集め方が劇的に変わった。IT(情報技術)はもちろん、IoT(モノのインターネット)の浸透で、世の中の様々なものがつながり、企業や個人が手にする情報量は確実に増える。そしてAI(人工知能)で分析し、生産スケジュールの組み立てや需要予測に役立てるという潮流が生まれている。この流れがビジネスを変える。背景にはテクノロジーの急速な進化があり、今後もピッチが緩むことはないだろう。変化に目を背けていては、成長から取り残される。

 (稲田拓志)

勉強か、支払い続けるか

 「自分で勉強するか、お金を払い続けるか、どちらしかない」。あるITベンチャーの経営者の言葉だ。IoT、AI、VR(仮想現実)。バズワードがいくつも登場した17年。特にIoTとAIは世間をにぎわせ続けた。IoTとは簡単に言うと、世の中の様々なものがインターネットにつながり、ビッグデータを集積すること。東京大学大学院経済学研究科の柳川範之教授は「まだ本格化していないので、イメージがつかみにくいが、確実に産業構造を大きく変貌(へんぼう)させる」と指摘する。

IoT関連の展示会は多くの来場者でにぎわう(ET/IoTテクノロジー2017)

 その上で、IoTを分かりやすく説明するために使ったのが、講演の際の手元のミネラルウォーター。「講演中に空っぽになるまで飲むことはないだろう。その意味で水の量は需要とマッチしていない。もしペットボトルにチップをつけ、何月何日のこの時間に必要な量はどれくらいかを把握できれば、ペットボトルのサイズを変えることでコストが下がるかもしれない」。IoT社会の到来で、「今までとは情報の得られ方が全く異なり、そこには大きなチャンスがある」と付け加える。この理屈は様々な産業で使える。ファッションビジネスにも当てはまり、例えば、人の勘に頼っていた需要予測に役立てられる。

 IoTよりも頻繁に聞くのがAIだが、IoT、ビッグデータの活用とセットで考える必要がある。昨年5月に公表された「新産業構造ビジョン」が「今、何が起こっているのか?~技術のブレークスルー~」として記述した仕組みが分かりやすい。①実社会のあらゆる事業・情報がデータ化・ネットワークを通じて自由にやりとり可能に(IoT)②集まった大量のデータを分析し、新たな価値を生む形で利用可能に(ビッグデータ)③機械が自ら学習し、人間を超える高度な判断が可能に(AI)④多様かつ複雑な作業についても自動化が可能に(ロボット)――の4点を指摘し、「これまで不可能と思われていた社会の実現が可能に。これに伴い、産業構造や就業構造が劇的に変わる可能性がある」と報告している。


リテラシーを高める

 ファッション分野でPB開発を本格化させている米アマゾンは、デザイナーをビッグデータとAIで代替するAIデザイナーを開発していると報じられた。日本のアパレル、SPA(製造小売業)が消費者にアプリのダウンロードを勧め、データの収集に力を注ぐのも同様の流れだ。

 こうした仕組みは、ITリテラシー(理解力や活用能力)の高い企業が先行し、日本のファッションビジネス全体としては取り組みが遅れている。一般にファッション企業は、他産業に比べて企業規模が小さく、新たな投資に踏み出す余力が乏しい。テック系の人材も少ない。ただ、時代は大きく変わり、高い波が押し寄せつつある。ファッションビジネスで生き残るためには、企業も個人もITリテラシーを高めなければならない。



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