EU、低額小包への課税強化 フランス主導で制度改正急ぐ

2025/11/20 06:25 更新NEW!


 【パリ=松井孝予通信員】EU(欧州連合)が、低額小包への課税強化に踏み切る。中国発ECの急拡大で小包流入が急増する中、EU財務相理事会は11月13日、現在150ユーロ以下に適用される関税免除を26年1~3月期にも撤廃する方針で政治合意した。12月12日に正式に決定する見込み。従来の28年導入計画を大幅に前倒しし、制度改正を急ぐ。

 背景には、米国が8月に800ドル以下の小包の免税を廃止したことで、中国製品の流入がさらに増えるとの懸念がある。

 EUの対中貿易赤字は24年に3000億ユーロを超えている。欧州委員会は、価格の過少申告や安全基準を満たさない商品、偽造品の流入が税関業務を切迫させていると指摘する。欧州委によれば、中国系ECで販売される商品の最大96%が規制不適合で、22年に押収された偽造品の4分の3を占めた。

 今回の合意では、フランス経済・財務省の働きかけが大きかった。「シーイン」が仏百貨店BHVに常設店を開く直前に、同社サイトで児童ポルノや武器分類に該当する商品が販売されていたと報じられ、仏当局は欧州委に一時的な販売停止を要請した経緯がある。議論は企業の問題を越え、EU全体の制度改革へと一気に進んだ。

 今後は、課税方式が焦点となる。欧州委が価格に応じた定率課税を支持する一方、フランスは中国企業の過少申告への対抗策として、1件5ユーロの定額方式を求める。また欧州委は、26年末から小包1件につき2ユーロの処理手数料を新設する案も提示した。ルーマニアは既に5ユーロを徴収し、フランスも2ユーロ案を26年予算に盛り込むなど、域内の制度整合性が課題となる。



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