22~23年秋冬デザイナーコレクション リュウノスケオカザキ、はかなげな造形ドレス

2022/04/05 06:28 更新


 東京のデザイナーブランドによる22~23年秋冬コレクションの発表が続いている。独自のスケジュールで発表するブランドの中には注目の若手ブランドもある。

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 「リュウノスケオカザキ」(岡﨑龍之祐)は再開発中の渋谷の工事現場を舞台に2回目のコレクションを披露した。「渋谷ファッションウィーク2022春」の一環として開催したもの。

 ブラックのドレスコードで固めた観客たちがショー会場に着くと、安全に配慮して黒いヘルメットが渡される。建築中の建物のコンクリートの梁(はり)で囲まれた空間、そこに煌々(こうこう)とした照明が当てられると、暗闇の中からモデルたちが光に向かって歩いてくる。それはひらひらとした羽のような布のパーツを組み合わせたドレススタイル。骨組みと布で羽のようなパーツを作り、それをつないでふわふわとしたドレスを作る。

リュウノスケオカザキ
リュウノスケオカザキ

 立体的な造形ドレスはシンメトリーの構造で、光を求めて集まる昆虫のようでもあり、どこかはかなげな空気をもっている。「001」と題されたコレクションは、ファーストコレクションと共通の背景を持つデザインなのは分かるのだが、秋冬なのかどうかさえ分からないシーズンレスなイメージだ。

 ひらひらとしたアブストラクトなドレススタイルは、パリ・オートクチュールで見せる「イリス・ヴァン・ヘルペン」のコレクションにも通じるものがある。ヘルペンの場合、3Dプリンターという新しい技術を取り入れて新たなクチュール像を作ったわけだが、リュウノスケオカザキはどこに向かおうとしているのだろうか。季節感も感じさせない造形ドレスは、抽象的な概念を形にした〝衣装〟としての側面を強く感じさせる。

 ファッションデザインは、ファッションの持つファンタジーやデザイナーのエモーションという価値と、製品としての価値の両面で成り立っている。製品としての価値よりもファンタジーやエモーションが圧倒的に勝ると、それは衣装や実験的な〝作品〟になってしまう。そうなるとプレタポルテ(既製服)としては成立しなくなる。

 その場合、イリス・ヴァン・ヘルペンのように限られた顧客に向けたクチュールとしてビジネスを成立させるのか、あるいは「トモコイズミ」のようにコスチュームデザインという形で違う分野でビジネスを成立させるかになる。

 もちろん、リュウノスケオカザキの造形的なドレスのクオリティーは、若手の中でかなり高い。そして、ファンタジックな造形美を描ける若手デザイナーが少ないこともあり、ファーストシーズンは高評価され、LVMHヤングファッションデザイナープライズのファイナリストに選ばれた。

 新たな造形に挑む姿勢を評価しつつも、デビュー2シーズンのデザイナーに製品としてのファッションとの関係を問うのは厳しいであろうか。それでも、どういう形でそのクリエイションをビジネスとして成立させるかを今後、考える必要があることは確かだ。ファンタジーとプロダクトのバランスを高めて、プレタポルテのファッションデザイナーとして進むのか、それとも違う選択をするのか。それを考えるべき時期を迎えている。

(小笠原拓郎)

 「ユウショウコバヤシ」(小林裕翔)はこのほど、都内で22年秋冬のショーを単独で行った。

 会場には、ステンドグラスの窓やピアノを配置し、レトロなムードの部屋を演出する。冒頭に登場するのは、パッチワークのドレスにオンブレチェックの中わたアウターを重ねた女性のモデル。赤のハウンドトゥースのジャケットにミニ丈キュロットのセットアップが続く。量産も含め、全てアトリエで制作しているクラフトタッチの柔らかさは変わらないが、どこかストリートな装いがいつもよりリアリティーを感じさせる。

 小林らしいクロシェニットのカーディガンも、ボリュームのあるフレア袖が付いてショート丈。ウエストを露出し、タイダイのフレアパンツキュロットをレイヤードする。ポップでトレンド感も備わったスタイリングが、ほっこりとしながら、カワイイ存在感を際立たせる。「ギャルっぽさを意識した」と小林。少女から大人の女性に成長する過程を豊かなテクスチャーで見せた。

ユウショウコバヤシ
ユウショウコバヤシ

(須田渉美)



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