セールをやめ、単品に依存したMDと店作りを改め、社名ブランドのプレミアム化を直営店で進めるデサント。スポーツウェアの開発で培った技術を日常着に落とし込み、カッコ良く快適な物作りに定評のあるブランドだが、一方で、直営店の商品構成は「水沢ダウン」に偏り、セールに依存する運営も見られた。
【関連記事】《トップに聞く》デサント社長 小関秀一氏 ブランドの地位向上に力 アレンジうまい中国から学ぶ
新ラインで厚み
そこで同社ではまず22年からセールを廃止した。23年春夏からは、MDに厚みを持たせるためアウトドアスポーツの「オルテライン81」など新ラインを相次ぎ導入。社内で「隠れた銘品」と言われていたシェル「クレアス」を春夏に訴求する施策にも取り組んだ。
既存店の改装も実施。プロパー直営店の大半を占めていた「デサントブラン」は、おしゃれに敏感な層を対象に、水沢ダウンも売るファッション業態。しかし、「デサントが誇るのは競技者向けに開発した高機能品。そんな背景を持つ多様なカテゴリーを見せないとブランドがきちんと伝わらない」(塚田裕介デサントマーケティング部門デサントリテールマネジメント部部長)として、11店あったブランのうち6店を23年6~8月にスポーツ系製品を網羅したショップに刷新。2店を閉じた。
客単価が上昇
結果、セールをやめた22年12月中旬から23年1月は2ケタ減収となったが、今期(24年3月期)はプロパー直営店売上高(既存17店、11月まで)が前年同期比約60%増、1坪(3.3平方メートル)当たりの月売上高が150万円超の店舗も現れた。さらに店頭でのプロパー消化率は100%近くになり、客単価は高単価の水沢ダウンへの依存度を下げつつ、11月までの平均で31%上昇した。
改革は困難を極めた。特にセールの廃止は、それを前提に予算を組んでいた販売員から猛反発を受ける。リテール部門責任者の塚田氏は現場への説明に奔走。心が折れそうになったが、小関秀一社長の「覚悟を持ってやれ。ブランディングには必要なことだ」の言葉で踏ん張れた。
日本では今後、優良立地で大型店を増やす。そのモデルは、中国のスポーツウェアメーカー・アンタと合弁で運営する中国のデサント。日本より10倍以上広い店を一等地に出し、「驚くほど高い」価格でも人気を誇る。その優れた店舗・商品展開力を見習うため、23年には小売り部門のメンバーらを視察に派遣。そこで得た学びを日本に逆輸入し、プレミアム化をさらに進める。