コムデギャルソン 都内で22年春夏コレクション 迫力の造形美と軽やかさの共存

2021/10/05 06:28 更新


コムデギャルソン

 コムデギャルソンは10月4日、本社のフロアショーで22年春夏コレクションを見せた。新作は、アブストラクトなフォルムと大きな柄が重なり合う。ドット、ボウ(リボン飾り)、フラワー、ハウンドトゥース。拡大された柄をのせた迫力の立体ドレスが見る者を圧倒する。そのフォルムを生み出すのは、ボーンのような張りを生かした生地やチュールを挟み込んで膨らませた生地。チュールを束ねて結んで立体を作ったものもある。

 視覚に訴えるドレスは、時にヘンリー・ムーアの彫刻のようでもあり、中には花びらが大きくなったようにも見えるフォルムもある。解体され抽象化されたドレスが持つ生々しさや造形そのものが持つ不思議な力に驚かされる。それを成立させるのは、丹念に作り込まれた服のクオリティーだ。デジタルプリントのようにぼやけたフラワー柄の上にのせた立体的な黒い花びらは、刺繍のようにも見えるのだが至近距離から見てもどうやって作っているのかが分からない。チュールで立体的に作るフラワー刺繍のドレスは、その上にチュールの布を重ねて花に陰影を作り出す。黒と白の造形美にアクセントを作るのはパステルカラーのウィッグやソックス。造形フォルムが迫力いっぱいであるにもかかわらず、ポップな色のコントラストでどこか可愛くも見えてしまう。

 いわゆる一般的な服の概念の外側にある“服ではないもの”を作ったこともある川久保玲。今回のコレクションはその流れを受け継ぐものではあるが、かつての造形美と比べると重々しさはなく、造形の美しさとともに軽やかな清涼感すら漂う。プレタポルテ(高級既製服)のビジネスを続けているが、このコレクションはもう完全にクチュール。量産化される服で、このコレクションをどうビジネスに落とし込むのかにも注目したい。

(小笠原拓郎)



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