「ここのがっこう」は、山梨県富士吉田市で23年受講生の展覧会を4月21日まで開いている。東京から近い産地で、デザイナーと物作りの現場を近づけようと始めた同展覧会は、4回目を迎え、一段と見応えのある作品が揃った。
(須田渉美)
ユニークな視点で
市内の空き家物件を生かし、メイン会場のフジヒムロを含めて6カ所で発表が行われている。参加者はアドバンスドコース17人、マテリアル&マターコース20人。プライマリーコースとプレアドバンスドコースは合同展示を行った。その多くは20代だが、デジタルの手法に頼らず、アナログのプロセスを取る姿勢が目を引いた。
〝立体のドローイング〟を自在に操るのは喜多川幸奈さん。今年3月に東京芸大建築科を卒業し、洋服の原形にとらわれず、立体の模型を作ってオーダーメイドに取り組む。依頼者は、様々な形状を描いたリストから好きなものを選び、スカート、ズボン、ワンピースなどの作りたいアイテムを決める。喜多川さんは、それらを融合してイメージ画を手描きし、依頼者に納得してもらった後、発泡スチロールを刻んでミニチュアの模型を作る。それを元にパターンを起こし、原寸大に置き換えて服を作る。会場には、なみなみスカート、ぽてぽて袖のシャツなど造形に富んだ洋服と模型が並んだ。
友人とともに「ジェイキッド」というブランドを立ち上げた村山達也さんも、ユニークな造形のワードローブを見せた。アニメや映画のキャラクターを念頭に曲線の輪郭を強調し、夢の中で生きているような感覚を表現する。トラックパンツは裾に向かってスクエア型に膨らみ、MA-1をベースにしたコンビネゾンは背中が大きく膨らんでドレープを描く。「あいまいな形だからこそ、何にでもなれる。新しい自分を楽しんでもらいたい」という。