クリーニング業界を取り巻く経営環境は厳しい。春になって冬物の重衣料を洗濯に出すという生活シーンが、新型コロナウイルス感染の影響で激減した。テレワークが進むとカジュアル化はさらに進む。少子高齢化や家庭洗濯の増加、クリーニング現場の人手不足という構造問題も続く。全国クリーニング生活衛生同業組合連合会の統計では、18年までの10年で一般クリーニング所は3万8000が2万5000、取次所は9万8000が6万4000に減少した。こうした苦境を打破しようと、若い経営者を中心に、新しいビジネスモデルで活路を見いだす動きが目立つ。
(山田太志、友森克樹、金谷早紀子)
縫製や業務用洗濯を国内で手掛けていたティプラン(大阪、辻本のぼる社長)。13年にタイ・バンコクで洗濯のコンサルティングを始めたのが海外事業のきっかけだった。14年にはイオンモールがカンボジア・プノンペンに進出したのをチャンスと捉え、モール内に工場および取次店をオープン。「1年目は厳しかったが、富裕層を中心に日本の洗濯の品質やサービスが評価され2年目から軌道に乗った」。カンボジアでは、イオンモールのセンソックシティ店などを含め、現在5店舗になっている。好立地の場所があれば、さらに多店舗化する。
18年にはタオル会社から声がかかり、インドネシア・バリ島に進出。BtoC(企業対消費者取引)のカンボジアと異なり、ホテルのリネンサプライ向けの洗濯事業で、約2600平方メートルの工場を設けた。今年2月には黒字化している。タイでもホテルリネンの事業計画を進行中で、来春をめどに具体化していく。
コロナの影響でホテル需要がストップ、当面は国内のリネンサプライ事業も再強化する。ただ、中長期的なアジア強化の方針は変わらない。既存事業での人材の育成・強化を進めながら、ラオスやスリランカなど新たな可能性も探っていく。