「糸が無い」――毛織物の尾州産地に混乱が生じている。中国・上海でのロックダウン(都市封鎖)によって、現地での生産や通関、運送の業務が3月末から5月いっぱい止まったためだ。上海港から搬送される梳毛糸を主体に輸入が途絶えた結果、22~23年秋冬テキスタイルの最盛期を迎える4~5月、糸が無くて生産できない事態に陥った。コロナ禍から脱して受注が回復しつつあった産地にとっては大きな打撃だ。外的要因に左右される国内生産の弱点が浮き彫りになった。
(浅岡達夫)
もし10年前なら、秋冬物に向けた尾州産地の糸手配は前年のうちに大半を終え、今回のロックダウンは影響がなかったはずだ。それが今回の事態を招いた背景には二つの要因がある。
少ない在庫能力
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