口コミで集客、女性靴職人のパイオニア

2016/03/25 07:22 更新


《スタンス》「ベルパッソ」を手掛ける靴職人 捧恭子さん

足元から人生を支えたい


 東京・神楽坂の住宅街に、口コミで客を集めるシューズのアトリエ兼ショップがある。捧(ささげ)恭子さんによる「ベルパッソ」がそれだ。捧さんは、日本における女性靴職人のパイオニア的存在。美術大学卒業後、「ヨーガンレール」のテキスタイルデザイナーを経て、靴の世界に飛び込んだ。以来、靴を作り続けて27年。約12年前から神楽坂で活動している。


1足ずつ手縫い

 アトリエは、飯田橋駅から歩いて数分。神楽坂のランドマークの一つ、毘沙門天善国寺の脇道を進んだところにある。「引っ越した当初は、こんな奥まった場所なんて誰も通らないんじゃないかと思った」が、今ではギャラリーショップやしゃれた飲食店が点在するエリアだ。ここ数年の神楽坂人気で、平日でも街には人が多いが、「表通りから入っているため、東京の真ん中なのに、ここはとても静か。1足ずつアトリエで縫っているので、落ち着いて仕事ができる」点が気に入っている。

 アトリエは基本的に予約制で、近隣のマダムや紹介を受けた客、口コミでうわさを聞きつけた客らがやってくる。取材日の前々日はイタリアから、前日は新潟から客が来たという。「人の輪に支えられてやっています。それがこの街ならではかもしれません」。なかには22~23年来の顧客もおり、初期の靴を修理しながら履き続けている。

 「もともとテキスタイルをやっていたから、私は染料で色を作るのが得意。つま先部分などが傷んで色落ちした場合でも、うまく色を作って直すことができちゃうんです」と笑う。そういう姿勢が、顧客に信頼されている。

 アトリエには、これまで作ってきた靴がずらりと並ぶ。それらをもとに、足のサイズを測って木型から作ったり、別素材や色のオーダーを受けたり。もちろん、一からデザインをおこす場合もある。

 価格は、仮合わせを行うプレーンパンプスで13万5000円から。オーダーから完成まで、3カ月前後の時間をもらっている。サイズや足型が合えば既製品を買うこともでき、その場合はパンプスで5万~6万円台から。

窓の向こうに緑が茂るアトリエで
窓の向こうに緑が茂るアトリエで

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