飲食店経営からアクリルアクセサリーの世界へ シラタキカク、廃業寸前の町工場を再生

2025/04/25 12:00 更新NEW!


 シラタキカク(兵庫・尼崎市、白田和茂代表)は、廃業予定だったアクリル加工工場を引き継ぎ、16年に立ち上げた会社だ。自社で企画・デザイン、製造、販売するアクリルアクセサリーの「サン」から始まり、ノウハウを生かして職人と協業したアクセサリー「ヌエべ」なども手掛けている。

(藤本祥子)

全工程を1カ所で

 白田代表の前職は飲食店の経営者で、跡取りだったわけではない。日曜日の昼に店舗を使って、ヨーロッパ雑貨やオリジナルTシャツなどを販売していた。オリジナルのアクリルアクセサリーも売りたいと思うようになり、連絡した先が後に引き継ぐことになる工場だった。「廃業予定で注文は受けられないけれど、見学に来るくらいなら」と言われ、工場に足を運んだ。

白田和茂代表(左)とデザイナーの白田梨恵子さん

 当時はアクリル加工品の市場規模が縮小傾向で、廃業を決めるまでに10人ほどに声を掛けても、誰も跡を継ぎたがらないほど厳しい状況だった。「ブルーオーシャンで逆に良いと思った」と白田代表。工場を引き継げば、自分たちが納得するまで修正でき、必要な分だけ作れると申し出た。

 自社工場はアクリルアクセサリーの製造に特化している。アクリル加工は分業が一般的だというが、ここではカット加工、研磨作業、曲げ加工などの工程を1カ所で完結できる。サンのアイテムを製造するほか、一部OEM(相手先ブランドによる生産)も受けている。

アクリルアクセサリーの製造に特化した自社工場

 サンは、はやりの色や柄を取り入れたオリジナルのアクリル板を使ったヘアアクセサリーやピアス、イヤリングを揃えている。デザイナーは、白田代表の妻の梨恵子さん。アクセサリー・雑貨メーカーでデザイナー経験を持つ。「シーズンごとにデザイン数を決めるのではなく、日常で思いついたものを手描きでデザインしている」という。雲モチーフのヘアクリップや、ネオン管をうねらせたようなデザインのピアスなど、曲線を生かしたものが多い。中心価格はヘアアクセサリー4000~8000円、ピアス・イヤリング6000~7000円。

アクリルアクセサリーの「サン」

 つや出しに木のバレル(樽)を使うのがサンの特徴。バレルの中に製品と竹のチップを一緒に入れて回し、わざと小さな傷をつけながらオイルコーティングして、表面の光沢が長く維持できるようにしている。

職人との協業も

 ヌエべは、きれいめからカジュアルまで幅広いシーンで使えるイミテーションパールやカットビーズを使ったアクセサリーを揃える。日本の職人と協業し、メイド・イン・ジャパンを強調する。サンと同様に、デザインは梨恵子さんが手掛けている。中心価格はヘアアクセサリー3000~8000円、ピアス・イヤリング5000~7000円。

日本の職人と協業して作るアクセサリーの「ヌエべ」

 JR尼崎駅近くに、サンとヌエベの直営店を2階に併設したセレクトショップ「ハモミシ」も運営している。1階には子供服と大人服の仕入れブランドとオリジナルブランドが揃う。

セレクトショップ「ハモミシ」

 同社の24年11月期の売上高は、1億4000万円で前期並み。今期も「売り上げを伸ばす計画はない」という。売り上げよりも、自分たちがやってみたいことに挑戦する姿勢を大切にしている。販売は自社ECを軸に、定期的に阪急うめだ本店や東京のギャラリーなどで期間限定店も開いている。台湾や香港、中国を中心に海外販売もしている。白田代表は「韓国やアクセサリーに使うアクリルの生産が盛んなイタリアでも販売してみたい」と意欲も見せる。



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