「バレンシアガ」はこのほど、22年フォールコレクションをデジタル配信し、パリでリシーを行った。ロストテープと名付けられた映像は、ハーモニー・コリンが監督したもの。90年代のセレブリティーを集めたショーをイメージした映像で、ナオミ・キャンベルやイザベル・ユペールが登場する。画像の粒子を粗くして当時を表現しようとVHSで録画したため、服そのものの詳細は見えにくい。ただその映像からは、ゴスやレイバー、グランジなど90年代のイメージを感じることはできる。
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コレクションは、黒を軸にした厳かな空気が漂う。極端に大きなショルダーラインのコートや構築的な襟のアウターなど、バレンシアガがこれまで見せてきたフォルムが継承されている。テーラードスタイルの立体的なウエストシェイプやフレアに広がるブラックドレスにもコンセプチュアルな要素を感じることができる。
立体的な襟に見えたショートコートは、フードがスクエア型のトラベルピローになっている。ダウンのドレスはクリストバル・バレンシアガのシグネチャー的シルエットで、後ろのリボンは取り外しができる。レザースカートは前からみるとフレア、後ろから見るとややタイトスカートのダブルの表情を作る。全てのランジェリードレスは素材が100%リサイクルでできている。アクセサリーはパンツとブーツをひとつにしたパンタブーツやカウボーイブーツからインスピレーションを得たサイハイウェーダーなど。
プレタポルテで使用する無地とプリント生地の89.6%がサステイナブル認証を受けており、ガーメントとアクセサリーにアップサイクルのレザーが使用されている。クリエイティブディレクターのデムナ・ヴァザリアは今後、アーティストの肩書と出生名を区別して、ファーストネームのデムナのみを使用することも明らかにした。
(小笠原拓郎)