オーダースーツ市場が堅調だ。自分好みのデザイン、サイズにカスタマイズする人はパーツにもこだわる。表面的なデザインだけでなく、脇役の裏地にも光が当たっている。
キュプラ「ベンベルグ」裏地を主力に製造販売する旭化成の繊維事業本部によると、昨今のオーダースーツ専門店は「カスタマイズへの関心の高まり、リーズナブルな価格設定を背景に新規客層が増えている」という。オーダースーツの縫製を担う国内の工場は生産能力いっぱいまで埋まっている状態で、ベンベルグの先染め裏地を作る山梨県富士吉田市の産地も「フル稼働が続いている」と話す。
同社は通常、生地商社を通じて裏地を販売しているため、店頭での販売状況を細かく把握することはできていない。裏地にも関心が向けられている今、販売機会を着実に捉えていくために「ベンベルグ裏地の特性をしっかり伝えるとともに、ニーズをつかみ商品企画にも生かしたい」と考えている。
その足がかりとして28日まで、東京都千代田区の「ベンベルグ裏地ミュージアム+」で、オーダースーツ専門店向けに裏地の展示会を初開催している。生地商社の協力も得て、オーダー専門店の販売員を中心に招き、ベンベルグ裏地の優れた吸放湿性や袖通りの良さなどを解説し、店頭での接客に生かしてもらう考え。
オーダースーツ専門店としても、より特別な仕様にしたり、ボタンや裏地のランクを上げてもらったりすることが収益向上になる。解説後にはディスカッションの場を設け、販売員にとってより使いやすい販促ツールの作成を検討するなど、踏み込んだ取り組みにつながるよう対話に努める。