全日本空輸は、整備士の作業着をアップサイクルしたトートバッグを昨年から販売し、完売が続いている。ルートートのトートバッグ「ルートート」と共同で企画した。
商品は全国の整備士から集めた着用済み作業着を活用する。丈夫な綿地を洗浄し、汚れのひどくない生地を選び「ANA」のロゴや胸ポケットを生かしてデザインする。トートバッグやサコッシュなど7種類ある。
きっかけは、全日空の社員が整備士の古くなった作業着が廃棄されるのを見て、再利用できないかと社内の提案制度に応募したこと。かばんにアップサイクルしてくれるパートナー企業を探したが、汚れなどの理由で断られ続けた。10社ほど断られた後に声をかけたルートートが応じて協業が始まった。ルートートは首都高速道路と道路の横断幕を利用したアップサイクルバッグなどに取り組んだ経験もあり前向きだった。
元作業着とわかるデザインを意識し、つなぎの前ファスナー、ポケット、ペン入れ、ロゴなど元のディテールを生かして製品化した。例えば、大型のトートバッグでは作業着の背中の大きなANAのロゴと胸ポケットを生かした。作業着ごとに使用感が異なり、商品一つひとつ表情が異なるのもポイントだ。
製品化したものを21年にクラウドファンディングに出したところ、好評で完売が続いた。購入者の半数以上はANAのファンで、一点物であること、ユーズド感のある味わいなどが人気の理由だ。これを踏まえ、22年5月にオンラインサイトを立ち上げて本格的に販売を開始した。販売は年3回で、完売が続いて抽選を続けている。
全日空の整備現場でもサステイナビリティー(持続可能性)の意識が高まっている。ファンとのつながりも強く感じるようになったという。着古した分しか作れないが、継続して生産・販売していく。