「オールモストブラック」(中嶋峻太)はこのほど、23年秋冬~24年春コレクションをショー形式で披露した。会場となったのは草月会館。この2シーズンにわたってコラボレーションした、いけばな草月流創始者の勅使河原蒼風ゆかりの場所を選んだ。
コレクションは黒を中心とした縦長のシルエット。コートやシャツに、カットアウトのディテールがジオメトリックに取り入れられ変化を作る。メタリックなオブジェやストリングスをアクセントにしたコートやシャツ、ややボリュームのあるMA-1といったアイテムが揃う。シンプルな縦長のラインの中で、シャツの背中には花のプリントが描かれる。
プロダクトクオリティーは決して低くはなく、服としては破綻していない。しかし、メンズクロージングのワードローブの狭い範囲のデザインが中心であるためか、どこかで見たようなデザインの既視感を持ってしまう。ラフ・シモンズのもとで2年働いた経験もあってなのか、デザインの取り入れ方や柄のこなし方がとても似ている。それは、このブランドにとって、長所にもなりうるがウィークポイントにもなりうる。かつて影響を受けたデザインから一歩突き抜けて、自分らしさに執着できるかが問われている。
(小笠原拓郎、写真=加茂ヒロユキ)