アマゾン・ファッション・ウィーク東京19年秋冬 服作りの本質に向き合う若手デザイナー

2019/03/26 06:27 更新


 アマゾン・ファッション・ウィーク東京19年秋冬は、素材の質感やパターンの美しさなど服作りの本質に向き合った中で、ベーシックにとどまらないスタイルの変化や見せ方が見どころとなった。最終日には、トーキョー・ファッション・アワードを受賞した6ブランドがショーを行い、30代のデザイナーが今を切り取るクリエイションを見せた。

(須田渉美、小笠原拓郎、写真=加茂ヒロユキ)

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 チノ(茅野誉之)は、グランジをテーマに、スマートで品のある女性らしさと、ベーシックで肩の力が抜けたメンズウェアを見せた。シャビーな色柄、スタイルはそのままに、艶やかさやドレープ性、きめ細かな素材感が見えるテキスタイルへと置き換える。

 滑らかな毛並みのレパード柄のセットアップは、スタンドカラーの白シャツをインナーにしてハンサムな印象に。澄んだ色彩のオンブレチェックはマキシドレスやバックスリットの入ったパンツなど、空気をはらむような裾のシルエットでエレガンスを柔らかに表現する。

 ストリート感覚のリラックス感を出しながらも、パターンで洗練させる。ふっくらとした厚みのウールコートは、袖や後ろ身頃を縦のラインで切り替えて自然に広がるシルエット。ドロップショルダーのコートは袖を前振りの作りにして、立ち姿にメリハリを利かせた。

チノ

 ポステレガント(中田優也)は、ぜいたくな素材の強さを生かし、流れるシルエットをモダンに表現した。ロングコートは金具やボタンなどの付属の使用を極力抑え、体に沿ったフォルムで作りの良さをしっかりと見せる。

 シンプルなレイヤードスタイルに変化を出すのは、大きめのスクエア型ポケットを付けたベスト、存在感のある太いベルトなど直線的な要素。グレー、ブラウン、グレイッシュパープルなどシックで知的な配色をベースに、ブルー、レッドの差し色で躍動感を出した。

 メンズの着こなしには、ローゲージのセーターやベストにハンドステッチを入れて、ストリートっぽさも加えた。

ポステレガント

 アーネイ(羽石裕)は、和のモチーフとスポーツが交錯するベーシックなデイリーウェアに、配色の変化で奥行きを出した。グレーのトーン・オン・トーンやカーキ、ブラウン、ベージュの着こなしをベースに、くすんだイエローを差し入れたり、からし、オレンジ、赤茶のスタイリングを組み込んだり。

 ボアコートの下には、スタンドカラーのジャケット。パーカにワークスタイルのブルゾン、モッズコートの重ね着には、センタープリーツの入ったクロップトパンツ。ちまたにあふれる着こなしを、配色のセンス、テーラードアイテムの合わせ方で洗練させている。

アーネイ

 ノブユキ・マツイ(松井信之)はショー会場のバックステージに小さな1列のシートを作り、そこにエアパッキンを敷き詰めたステージを作った。アマゾン・ファッション・ウィークの参加にちなんで、緩衝材に着目し、服に関連付けてダウンパックを取り入れるという演出。モデルたちが歩くたびに、エアパッキンが破裂してそこらじゅうで音が鳴る。

 セーターに並ぶ六つのポケットやジレを大胆に切り替えたポケットにダウンパックを詰め込む。パックの量感でフォルムを変える一方で、裏側の仕様を応用してアシンメトリーに見せたパンツなどディテールで遊ぶ。テーラードジャケットもひっくり返し、裏地の縫い合わせをハンドステッチで飾った。

ノブユキ・マツイ

 京都を拠点にするレインメーカー(渡部宏一、岸隆太朗)は、和の要素を程よく取り入れた。テーラードジャケットの下には、鯉口(こいくち)風のノーカラーシャツを着用し、Vラインでシャープな表情を作る。

 セーターのケーブル編みもきものの合わせのような形で表現し、トラッドスタイルに新鮮味を出す。和のスパイスを利かせながらも、ダブルブレストのジャケットやスラックスなど立体のパターンをきちんと作り込み、西洋のエレガンスを立たせている。

レインメーカー

 ジエダ(藤田宏行)は、90年代後半から00年代のレイヴカルチャーを反映し、白とネオンオレンジの線でグラフィカルにかたどったランウェー、クラブイベントのような演出で見せた。

 ダブルブレストとシングルブレストを合わせたジャケットにトラッドチェックのクロップトパンツなど、トレンドのディテールや柄を混沌(こんとん)としたバランスで組み立てる。タイダイのパーカとチェックのブルゾンの重ね着には、ビニル素材のネオングリーンのパンツをはかせて、テクノっぽさを出した。

ジエダ

 ミスター・ジェントルマン(オオスミタケシ、吉井雄一)からの招待状には馬のモチーフが描かれる。ショー会場には、競馬場を思わせるグリーンのまぶしい芝生が敷き詰められている。

 そこに登場するのは、ミスター・ジェントルマンらしいスタンダードアイテムを解体して、再構築したスタイル。ジャケットをタックインしてシャツのように着て、その上に大きめのジャケットを重ねたスタイルは、エレガントなスカーフディテールがアクセントとなる。

 レイヤードでは、トレンチコートをミドリフ丈にカットしてジャケットにかぶせたり、ダッフルコートのトッグルボタンのついたフロントパーツを切り取ってコートに重ねたり。ボマージャケットやMA-1もミドリフ丈にしてレイヤード。ダウンジャケットやダウンコートには、馬と蹄鉄がプリントされた。

ミスター・ジェントルマン

 ビューティフルピープル(熊切秀典)は経済産業省の建物の地下のフロアでショーをした。パリで発表したコレクションにメンズを数ルック加えたコレクション。インサイドアウトや裏地と表地の間に体を通すといった着方で、アイテムが変化していくコンセプトの服がメインとなった。

 メンズはタブのようなオーバーベルトをウエストに巻き付けたスーツやチュニックのような裏地とコートが合体した服を出した。

ビューティフルピープル

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