【インタビュー】三井物産 林正夫 コンシューマービジネス本部 ファッション・繊維事業部長

2018/07/12 05:00 更新



 三井物産は、中期経営計画(18~20年度)の重点施策の1つに「新たな成長分野の確立」を掲げている。成長分野とはモビリティ、ヘルスケア、ニュートリション・アグリカルチャーとリテール・サービスの4つ。ファッション・繊維事業部は、リテール・サービスの一翼を担う組織として、リテール強化、デジタル化を推進している。国内だけでなく、海外での拡販も意識しながら、次世代型の事業育成を加速させている。

 最終消費者へのパワーシフトが起きている

―7月1日付けで就任した。まずは環境認識について。

 入社から約20年、繊維ビジネスに従事して、その後、ヘルスケアや不動産、業務部での事業投資支援などを経て、11年ぶりに古巣に戻ってきました。繊維、ファッションビジネスについて感じているのは、国内市場に依拠する部分が多いということ、そこに課題認識を持っています。当社の繊維、ファッションビジネスは長い歴史の中で、プラザ合意で円高が定着した1980年代半ば以降は日本市場向けが中心。物作りにしても、ライセンスにしても、インポートにしてもです。自らの足許である日本市場が大事なのは間違いありませんが、今後の人口動態を考えた場合、日本国内のみをターゲットにした事業をこれからも継続的に伸ばすのは難しい。米国やアジアなど拡大する海外市場で売っていくことができる仕組み、商材を強く意識して仕事を進めて行きたいと考えています。

―全社として、リテール強化を推進している。

 最終消費者へのパワーシフトが起きているのは他業界でも同じです。遂行中の中期経営計画で重点施策の1つに「新たな成長分野の確立」を掲げていますが、4つの成長分野を設定しています。ファッション・繊維事業部は、成長分野の1つであるリテール・サービスの一翼を担っていく覚悟を持って進めて行きたいと思っています。リテール事業中心のマックス・マーラは好調を維持しており、また当社が商標権を有するハナエモリ、ピエールカルダン事業等も引続き、百貨店店頭に欠くことの出来ないポジションを強化しながらもう一歩自らリテール事業に踏み込む機会を模索していきたいと思っています。当社は資源・エネルギー関連等で強みを持つ一方で、リテール周りは決して強くはありません。辛抱強く皆でたすきを繋いで、リテール事業と言えば三井物産、と言われる位の強い組織体にしていきたいですね。

ビギホールディングスはまさにプラットフォーム

―その意味で、グループ企業となったビギホールディングス(ビギHD)への期待は大きい。

 ビギHDは約40ブランドを展開し、百貨店や駅ビルでのショップだけでなく、セレクトショップ業態も自ら手がけており、まさにプラットフォームと言えるでしょう。ブランド開発や運営のノウハウ、優れた企画力といったパッケージが出来ているのがビギの強みです。逆に海外との接点やECといった部分では成長の余地がありますので当社のネットワークやノウハウと融合させていければと考えています。

 リテールを考える上で大切なのは、消費者との距離を縮めるということ。そのためにはデジタル技術の活用が不可欠です。三井物産の総合力を活用し、デジタルを強く意識した新たな売り方に果敢に挑戦していきたいと思います。

ビギが展開する“プルミエ アロンディスモン” 新宿ニュウマン店

―やはりデジタル化は大きなテーマになってくる。

 スタートアップ企業から生まれる新たなアイデア、テクノロジーは、成長のために欠かせません。ファッション・繊維事業部が所属するコンシューマービジネス本部にはDT(デジタル・トランスフォーメーション)チームが設置されていますし、ファッション・繊維事業部内にはファッションテック関連などの投資案件を追い掛ける新事業開発室を新設しました。DTチーム、新事業開発室がそれぞれ走りながらシンクロし、デジタル関連投資を加速させます。

MIFは洋服を作るプロ集団

―三井物産アイ・ファッション(MIF)をはじめとする事業会社の運営については。

 MIFにしか作れないもの、MIFにしかない素材、をもっと打ち出していきたいと思っています。物を作る上で大事なのは独自性です。洋服を作るプロ集団として、事業部と一緒になってMIFならではの強みを打出していきます。米ポール・スチュアートに関しては、昨年ニューヨーク本店をリニューアルしただけでなく、商品政策、運営体制も刷新しました。一連の改革の成果がこれから出てくる所であり、ここからが勝負です。本国での新しい動きは、日本でのライセンスビジネスにも良い効果をもたらすと信じています。最終消費者へのパワーシフトが起こっている今、アイコンであるブランドが今後も必要なツールであることは間違いありません。

三井物産アイ・ファッション 2019年春夏総合展示会(2018年6月開催)

―海外での拡販に向けた方策は。

 海外でも通用する仕組み、商材をどう確立するかが重要です。MIFで行っている機能素材の輸出や「PERTEX」事業を拡大しながら、簡単ではないでしょうがスモールスタートでも良いので新たな仕掛けを始めて行きたいと思っています。ビギHDと三井物産がお互いのインフラを活用して新たな仕掛けをすることも有効です。例えば、ビギHD傘下にて販売することになった英「ジョンスメドレー」。本国からのインポートだけでなく、ビギHDのノウハウを活用した本国との共同企画商品をグローバルに販売していくことも考えていきたい。ビギHDのインフラ、ブランド本体および三井物産のルートを融合して海外で販売する、その第一歩になれば、と思っています。

Paul Stuart ワシントンDC店 外観

2021年トピックス

新しい市場に果敢にチャレンジするのが商社のDNA

 高齢化がさらに進む日本。富が集中している世代の消費が失われていくという不安は正直ありますね。ですが、日本の近くには、成長しているマーケットが存在します。人口が増えるということはイコール消費が伸びるということ、そこにはチャレンジしたいですね。商社のDNAは、新しい市場へ果敢にチャレンジすること。未開の地、次に成長しそうなマーケットへ挑戦するのが商社ですので。そして国内でも丁寧に見ていくと伸びているマーケットはあるはずです。とくにリテール周りは自ら事業を推進していく覚悟を持って、10年掛かりで強化していきたいと思います。


profile
はやし・まさお
1966年3月7日 兵庫県生まれ。89年3月早稲田大学政治経済学部卒、同年4月三井物産株式会社入社、関西支社繊維第一部、01年4月Mitsui Textile Corp.出向(在ニューヨーク)。
08年4月コンシューマーサービス事業本部メディカルヘルスケア事業部事業推進室長、09年11月同本部都市開発事業部事業推進室長、16年7月コンシューマーヘルスケア業務部事業支援室長。
18年4月コンシューマービジネス本部ファッション・繊維事業部、同年7月から現職。52歳。

(繊研新聞本紙7月12日付け)



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