23年春夏ミラノ・コレクション ぴったりシルエットが主流

2022/09/26 06:30 更新


 【ミラノ=小笠原拓郎、青木規子】23年春夏ミラノ・コレクションは、ニューヨーク・コレクションでも多く見られたボディーを強調するスタイルが全盛だ。伸縮性のあるジャージーのクロップトトップやニットのタイトドレスで体のラインをなぞり、ウエストや背中をのぞかせる。センシュアルな要素ももちろんあるが、それ以上に、ボディーに焦点を当てて自然なフォルムを楽しもうという提案に見える。男女の差異なく、ぴったりシルエットが広がっている。本格的なリアルショーの復活とあって、会場周辺に集まる人々もトレンドを先取りしたおしゃれに余念がない。

(写真はブランド提供)

量感のコントラスト、紙の風合い

プラダ

 プラダのショー会場に入ると、黒い紙で仕切られた四つの四角い空間になっている。部屋を仕切る壁代わりの紙のカーテンは、ところどころが四角く切り取られ、窓のようになっている。淡くにじんだような映像が映し出され、どこかミステリアスなムードが漂う。

 そこに登場するのは、テーラードジャケットとレギンスのように細いコンビネゾンのコーディネート。ぺーパータッチのコンビネゾンをタンクドレスと重ねたりコートと重ねたり。その量感のコントラストが面白い。白いドレスは身頃に熱でオーバープリント。わざとヘムラインに余白を残したプリントやプリントでプレスされてできるしわがアクセントとなる。ミニドレスはウエストをつまんでドレープを寄せ、フロントの布を折り畳む。透け感のあるセーターは、モヘヤをプレスしてつぶすことで透明感とともにパリッとした風合いに仕上げている。そのタッチや折り畳むテクニックなど、常に紙を感じさせるデザインが貫かれている。

 サテンのドレスはタックでボリュームを取ったり、しわの折り目を入れたり。レザーコートはフロントがタイトなのに、バックにボリュームをとってバレルのようなシルエットを描く。テーラードジャケットとボディースーツのように細いコンビネゾンの組み合わせ、艶やかなサテンドレスやナイトドレス、端正なラインと官能性のコントラストを感じさせる。そして、全体としてはとてもミニマルに感じるのに、わずかに強調されるフォルムやディテールの違和感が単純なミニマルではない存在感となって現れる。テーマは「TOUCH OF CRUDE」(粗雑な風合い)。

プラダ
プラダ
プラダ

 キム・ジョーンズによるフェンディは、鮮やかな色とラグジュアリーな素材を生かした。22年秋冬オートクチュールに続いて、ジャポニズムのエッセンスを取り入れる。シアリングやダブルフェイスのコートはきもののような前合わせ、バックには帯のように布が畳まれる。襟を立てたジャケットでマスキュリンの要素もプラス。そこにオーガンディにフロッキーで描いた植物柄など、カール・ラガーフェルドのアーカイブを意識したディテールが取り入れられる。ピスタチオグリーンやピンクのサテンのカーゴパンツのバックルは、バゲットバッグのバックルからイメージしたもの。軽やかなファーのタンクトップは、ニットの上にミンクをテープ状に留め付けたもの。軽やかなワッフルに見えたコートも、実は型押しレザーでできている。きれいな色と軽やかな雰囲気でさらりと見せながら、皮革やファーのアイテムには職人の技術が散りばめられている。

フェンディ

 エムエム6・メゾン・マルジェラは、コロナ前のように服と観客の距離が近いショー。会場の音楽ホールに入ると、オーケストラのメンバーが演奏の準備をしていた。ランウェーは舞台の上。ランダムに置かれた観客用の丸椅子の間をモデルが歩く。演奏が始まると、レオタードのようにピタピタのルックが男女の差異なく登場した。オフショルダーのボディースーツや華奢(きゃしゃ)なキャミソールに、ヒップのラインをかたどるストレートスカート。伸縮性の強い極薄のジャージーがセカンドスキンとなり、体にぴったり密着する。バレエを着想源に、体の動きがよくわかる新作が揃った。ガーゼのように薄い布は使い込んだ衣装のように小さな穴がたくさん空き、バレリーナのようにスキンアイテムを重ね着する。トレンドのボディーを主役にしたスタイルをセクシーではなく、カルチャーを感じさせるルックに仕上げるあたりエムエム6らしい。2シーズン目となる「サロモン」と協業したベストやサイハイブーツがアクティブなムードをプラスする。

エムエム6・メゾン・マルジェラ

 ヌメロ・ヴェントゥーノもいつも以上にボディーを強調している。体を締め付けてボタンを留めるテーラードジャケットやノーカラージャケットにペンシルスカート、スキニードレス。ストレートシルエットはブランドの特徴だが、今回はそれよりもぐっとスキニーな仕立てが多い。ブルーのシャツにグレーのプルオーバーといったスタンダードなアイテムすらセンシュアルに見える。そこからのぞくランジェリーがキーアイテム。汗ばんだ胸元がはだけて赤いサテンのブラがのぞき、透けるドレスやジャケットにはブルマーを合わせる。ぎらっとしたジュエリーと濡れ髪が相まって、艶やかに仕上がった。

ヌメロ・ヴェントゥーノ

 マックスマーラは、洗練された夏のマリンスタイルを提案する。爽やかなリネンのジャケットやケーブル編みのハイゲージセーターを、ボディーコンシャスに仕上げた。セーターはクロップト丈、ストレートスカートはハイウエスト。バイアスカットがフェミニンなラインを実現する。細身のインナーに大きめのジャケットを優雅に羽織り、麦わらのカプリーヌをコーディネート。スポーティーなアメリカンスリーブ、ドレッシーなリボンのトレーンなどさまざまな要素が添えられる。イメージはリビエラに集うボヘミアンたち。F・スコット・フィッツジェラルドやピカソ、ストラビンスキーらとともに過ごした女性たちが着想源になっている。タイトルは「青い水平線」。

マックスマーラ



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