【ニューヨーク=杉本佳子通信員】2021年春夏ニューヨーク・コレクションが13日始まった。参加ブランドは100強で、動画配信またはルックブック公開がほとんどだ。デジタルのトークやイベントもいくつか予定されている。一部のデザイナーは、今秋冬コレクションを見せる。IMG主催分は、17日まで会期が延長された。
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メジャーなデザイナーで唯一、ジェイソン・ウーがリアルのショーをした。ダウンタウンにあるスプリングスタジオの屋上にジャングルがつくられ、波の効果音が流れる中、ボードウォークの上をモデルが歩く。テーマは「現実逃避」。コロナで不自由な行動制限を余儀なくされている身としては、思わずうなずいてしまうテーマだ。イメージソースは、ジェイソンが「ハッピーな記憶がたくさんある」というメキシコのトゥルム。オレンジ、ブルー、蛍光黄緑にピンクと、鮮やかなカラーパレットが緑の木々の中で映える。オーバーサイズのシャツ、ギャザーやタックでボリューム感を出したドレス、だぼっとしたパンツなど、イージーでリラックスしたシルエットが並ぶ。そこにカットワークを入れて、遊びと清涼感を加えた。足元は、ひらひらなびく布飾りをつけたカラフルで可愛いスポーツサンダル。これは、初めて発表するカジュアルでコンテンポラリーなラインだ。前シーズンまでのドレスアップしたラインでは、コロナ禍のライフスタイルの中で違和感があるから、賢い選択といえるだろう。ジェイソン・ウーは最後に、「ヘイトから距離を置こう」のメッセージ入りマスクをして登場した。分断が進むアメリカ事情を反映している。
タダシ・ショージは動画配信形式。これも、草木が深く生い茂るジャングルのような環境にモデルを立たせて撮影した。シルエットはボディーコンシャスで、繊細なレース使いが目立つ。家でくつろぐ服に飽きて、そろそろ女らしさを思い出させるようなおしゃれをしたくなっている気分を表しているかのよう。鮮やかな配色のトロピカルフラワープリントも、タダシにしては珍しいチョイスだ。
メイシー・ウィレンは、自宅隔離中に温めたイメージをフューチャリスティックなファンタジーにまとめた。部分的にぼかしを入れてイリュージョン効果を狙った色柄、ジオメトリックなプリント、メタリックなストライプ、てかてか光るPVCのような素材が多い。ミニドレス、ミニスカート、レギンスなど、軽快感のあるアイテムが揃う。デザイナーは、カニエ・ウエストが手掛ける「イージー」のウィメンズウェアデザイナーだったメイシー・ウィレン。昨年、ブランドをスタートした。
アディアムは、明治記念館の庭園で撮影したショーを配信した。海外旅行が制限されている今、日本の夏をちょっと感じてほしいという趣向だ。登場したのはたっぷりしたボリュームのあるシャツ、ワイドパンツ、ドレスにサマーセーター。ラッフル、ベルスリーブ、後ろで結んだボウカラーなど、風になびいて生まれる量感がリラックスムードをつくる。ドレープをねじったり、パーカやソフトトレンチコートを見せたりして、デコンストラクトやユーティリティーの要素も混ぜていく。素材は浴衣に着想したリネンとコットンで、カジュアル感を出した。
PH5は、新デザイナーにオーストラリア在住のゾーイ・チャンピオンを迎え、オーストラリアの先住民が住むアワバカルランドで撮影したプレゼンテーション動画を配信した。かの地に伝わる土地と火にまつわる文化を紹介しつつ、ボディフィットのニットアイテムを見せた。シンプルなドレスやセットアップにアニマルジャガード、ハンドステッチ風に太いひもを通すディテール、シャーリング風によせたギャザーを入れている。