小さな部屋でモデルたちが自ら着替え、クロークにコートを積み上げて移動する。21~22年秋冬パリ・コレクションの「シャネル」の映像は、小さな空間やらせん階段を使った温かく親密なムードが漂う。カンボン通りのアトリエでもなく、グランパレの巨大な空間でもない。パリ6区のカステルという名のクラブを舞台に選んだ。
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秋冬はボリュームや素材のコントラストを利かせたスタイルが揃う。ぜいたくなラメツイードコートは透け感のあるドレスとコーディネート。クレリックシャツにはショート丈のコンビネゾンを重ねる。足元はカーリーなフェイクファーのボリューム感ブーツ。キルティングやツイードのスキーパンツやメタリックなサロペットなどアクティブな雰囲気を強調する。一方で、ブラックツイードのパンツスーツに繊細なパールのサスペンダーやネックレスをあしらい、パリシックを際立たせる。ふわふわとした毛足のファーのトリミングジャケットもゴージャス。
「私が愛してやまないスキーリゾートの雰囲気と、70年代から今に続くクールなパリジャンシックから影響を受け、調和させたコレクション」とヴィルジニー・ヴィアール。カール・ラガーフェルドから聞いたかつてのショーの雰囲気と、急逝したステラ・テナントへの思いも込めた。
(小笠原拓郎)