21~22年秋冬ニューヨーク・コレクションは、ロング&リーンのシルエットが広がった。強さと自信、エレガントなしなやかさを兼ね備えた女性像が浮かび上がる。カラーパレットは抑えめで、ボリュームで存在感を出したスタイルが目立つ。
(ニューヨーク=杉本佳子通信員)
【関連記事】21~22年秋冬NYコレクション ドレスアップ願望が止まらない!
ガブリエラ・ハーストは、雨でさび付いたがらんとした巨大な倉庫で行った無観客ショーの動画を、ウェブサイトとインスタグラムで配信した。イメージソースは、中世ドイツにあって女子修道院長・作曲家・詩人・哲学者などさまざまな肩書をもち、女性のメンタルケアでも知られたヒルデガルト・フォン・ビンゲン。女性が知と創造の世界から排斥されていた時代に対抗した彼女の強さと勇気を、エレガントで柔らかなラインで表現した。カシミヤ・ウール・シルクのブークレで仕立てたアイボリーのケープは、肩から裾に流れるたっぷりしたボリュームにエレガントな迫力と清廉さが漂う。ウエストをシェイプしたリブニットのドレス、ナッパレザーとカシミヤをボンディングしたコートなど、いずれも細長く伸びる丈の長さに存在感がある。
シャツドレスにのせた花柄、スカートに留めつけたクロシェの花は、ハーストの12歳の娘が描いた花に着想した。肩にリボンを飾ったトレンチコート、ウエストをレースでマークしたドレスもあり、ちょっと可愛らしい要素も入れている。カラフルなハンドニットとクロシェをパッチワークした大きなブランケットは、ポンチョのように羽織る。明るい気分と迫力が同居したアイテムだ。
プロエンザ・スクーラーは、心地よさとエンパワメントを併せ持つワードローブが時代に即していると位置づける。ベースはロング&リーンのソフトテーラーリングで、そこにニットやフリンジ、シアリングでソフトな要素を加えた。ロング丈のブレザーと足首を覆う丈のラップスカートのスーツ、膝下丈のコートとずるっと裾を引きずるパンツのセットアップなど、長さを強調したアイテムが目立つ。メランジニットのドレスも、裾が床に着く長さだ。きもののようなラップドレスや足袋のようなレザーソックスといったアイテムにどこか和の要素を感じることができる。長いスリットとカットアウトから肌をのぞかせるディテールが、自信としなやかさを兼ね備えた女性を感じさせる。
3.1フィリップ・リムは、70年代のロックンロールの気分を入れたグラマラスで楽しいコレクション。大きなメッシュ状に穴をあけたニットのトップ、裾に白いカフスをつけたイエローのクロップトパンツ、取り外しのきく裾をつけたニットのトップなど、遊びのあるアイテムが多い。そこにあわせるのはサンバーストプリーツスカート、太畝(うね)コーデュロイのブルゾンとスカートのセットアップといった、ちょっとノスタルジックなアイテム。差し色に使ったスカイブルー、イエロー、明るいロイヤルブルーも気分を引き立たせてくれる。
ジョナサン・シムカイは、1983年に撮影されたキース・へリングのボディーペインティングの写真に触発されたレースとクロシェを特注した。そこにさまざまなカットアウト、動きのあるフリンジとギャザー、ドローストリングを加えて、エレガントかつ力強いコレクションに仕上げた。アルチザンによる手仕事を多く入れるとともに、ニットはペルーでサステイナブル(持続可能)につくられたアルパカ糸を使用して編んだ。
ロゼッタ・ゲッティは、いつものミニマルなエレガンスに少しカジュアル感を加えた。プルオーバー、フーディー、膝下丈のパンツといったスポーティーアイテムが、上質感と温かみのある素材で仕立てられている。ゆったり羽織るコートとワイドパンツも似たような質感と色で重ね着し、リラックスしたラグジュアリーでまとめた。
スタジオ189は、ガーナの縫製工場でミシンが並ぶそばをモデルを歩くショーの映像を見せた。ナレーションでは、この仕事で生計をたてているという女性の声を流す。冒頭は、工場近辺の街並みやサッカーする人々、海岸の映像。臨場感のある生産現場を見せながら新作を発表する手法も、デジタルの利点を生かしたといえる。ハンドバティック、手織り、パッチワーク、インディゴ染め、古着から再利用したコットンとデニムを取り入れ、伝統とサステイナビリティーに力を入れた。