19~20年秋冬パリ・コレクション「ルイ・ヴィトン」未来と伝統の間で遊ぶ

2019/03/08 06:28 更新


 【パリ=小笠原拓郎、青木規子】19~20年秋冬デザイナーコレクションは、強い女性像に注目が集まっている。焦点は80年代。ギラギラとした輝き、カラフルな色使い、かっちりとした肩、細いウエストがポイントになりそうだ。

(写真=大原広和)

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 クラシックなルーブル美術館の中庭を歩いていくと、ブルーやイエロー、赤、グリーンなどの原色のパイプの建造物が現れる。ルイ・ヴィトンは、ルーブル美術館の中庭にポンピドゥー・センターにそっくりの建物を作って、そこをショー会場にした。歴史ある美術館の中に作った現代アートの象徴ともいえる建物。

 そんなコンセプトとシンクロするように、ニコラ・ジェスキエールのレトロとフューチャーのデザインが重なり合う。ニコラらしいガーリーなムードと80年代を思わせるショルダーラインが特徴で、ラッフルのような布をショルダーからV字に流したり、プリントドレスにショルダーラッフルを飾ったり。

ルイ・ヴィトン

 肩にだけポイントを置いて丸みのあるフォルムにしたショートブルゾン、ダミエを思わせるチェックのスカート、頭にはレザーの小さなキャップをのせる。パンツはスパイラルに流れるファスナーがポイント。

ルイ・ヴィトン

 ポンピドゥー・センターを思わせる配色のプリントブラウスやレザースーツも登場した。スザンヌ・ヴェガの繊細な歌声とヒップホップのスクラッチ音が重なる80年代のムードに、近未来とレトロが混ざり合う。

ルイ・ヴィトン

 バラのヘッドピースとともに、ノワール・ケイ・ニノミヤはバラのモチーフを生かした手仕事のアイテムをずらりと揃えた。マクラメのテクニックが目立つ。ライダーズジャケットのレザーがそのままマクラメでスカートのパーツになってライダーズドレスになる。レザーにオーガンディのバラのコサージュを重ねてマクラメ状に編んだドレスは、軽やかな透け感と繊細なバラの立体感が美しい。

 コサージュ状のバラをちりばめたボリュームたっぷりのドレスやレザーとフェイクファーをハニカム状にカットアウトしたアウターなどボリュームフォルムのアイテムも揃う。ハンドクラフトとインダストリアルなムードが混在するいつものコレクションに比べると、人工的な要素は控えめになった。

ノワール・ケイ・ニノミヤ

 オリヴィエ・ティスケンスの服は、美術館の作品のような精巧さが常にある。日常性は全くない。徹底してクチュールライクな服に挑み続けている。

 今回は、体に美しく沿うフォルムと、しっかりと構築したショルダーラインが特徴。襟付きのジャケットやテーラードコートは、身頃が肩甲骨の膨らみやウエストの反りに滑らかに沿い、肩が横に張り出して丸いラインを描く。

 スカートは裾が波打つ膝下丈。淑女のスーツにロンググローブとロングブーツを合わせて肌を覆うと、フェティッシュなムードがにじみ出る。ロングドレスのバリエーションも多いが、今回はスーツが目を引いた。

オリヴィエ・ティスケンス

 トム・ブラウンは、06年にピッティ・イマージネ・ウオモで見せたショーをレディスで再現した。会場にずらりと並ぶのはタイプライターを置いたデスク。当時、そこでグレーのテーラードスーツをピシッと着てタイピングしていた男性たちが、今回は女性に置き換わった。

 その厳格なオフィスワーカーの制服を起点に、クチュールライクな服をプレイフルに彩った。スーツをトロンプルイユで表現したストレートドレスにはアタッシェケースをアップリケし、ビーズやフェザーを華やかに飾る。コンセプチュアルアートのような遊び心で見せる。

トム・ブラウン

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