19~20秋冬パリ・コレクション 若手もエレガンスへ 

2019/02/28 06:29 更新


 【パリ=小笠原拓郎、青木規子】19~20年秋冬パリ・コレクションは、ここ数シーズン注目を集めている若手デザイナーや新人のデビューショーが続いている。これまでストリートの勢いを背景にしたスポーツスタイルで話題を集めてきた若手ブランドも、この秋冬はシックなエレガンスを取り入れている。もちろん、ベースとなるスポーティーな要素は残っているが、テーラードスーツなどを加えている。

(写真=大原広和)

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 コシェが会場に選んだのはコンサートやスポーツ競技に使われるアリーナ。アリーナ全体をランウェーにして、観客は座席から観戦するような趣向だ。これまでも多く使ってきたサッカーユニフォームの要素を盛り込んで進化させた。

 サッカーユニフォームのような鮮やかなマルチストライプのパンツスーツやユニフォームとレースをはぎ合わせたフレアドレスなど、バリエーションが充実。もともと、ウエストシェイプとフレアシルエットが特徴だが、今回は腰のサイドを3本の細いベルトで留めてシェイプを強調した。

 サッカーボールのように布を切り替えたボリュームコートなど、コシェには珍しい造形的なアイテムも。スポーツを背景にしたスタイルではあるが、ふわふわとフェザーが揺れる大きなハットやスーツスタイルのエレガントなアイテムを増やしている。ただし、スーツもミニ丈でハイソックスと合わせてアクティブに見せる。

 ショーの最中は、会場の大画面でサッカー大会さながらモデル一人ひとりを紹介するなど、今まで以上に演出にこだわった。

コシェ

 マリーン・セルはパリ郊外にある深いトンネルのような空間でショーをした。奥へと深く続くトンネル、その暗闇の中を鮮やかなグリーンのレーザー光線が照らす。モデルたちは目の下にピンク色に光るアクセサリーをつけている。

 コートの袖口や襟にはたっぷりのフェイクファーが鮮やかな色を描き、タータンチェックのコートやスーツには共地のガスマスクのようなパーツを付ける。タイトなジャージーが体の線をなぞり、パッデッドが部分的な量感を描く。

 シグネチャーともいえるボディースーツがそんな装飾にきりりとした未来的な雰囲気を加える。三日月プリントのプリーツドレスもセルのアイコンの一つ。暗闇の中、チャーム飾りのドレスが金属の揺れる音を奏でる。

マリーン・セル

 パリを拠点に活動するアフターホームワークは、オンスケジュールで2回目の発表。14年に15歳でキャリアをスタートした早咲きのデザイナー、ピエール・カチュマレクと、スタイリストのエレーナ・モットラが手掛ける。今回は内装を取り払った廃墟のような空間で披露した。

 イメージはカジュアルなクラブファッション。タイトなミニ丈のトップとたっぷり量感のパンツやロングスカートに、ドローコードでギャザーやステッチを入れた。ドローコードで縫うようにステッチを入れたり、身頃を縦横に絞ったりして無造作なフォルムを作っていく。ほこりっぽい空間と、そのラフな雰囲気がマッチする。少々雑ではあるものの、自由なノリは楽しい。

アフターホームワーク

 マルケス・アルメイダは前回に引き続き、シーナウ・バイナウ形式で19年春夏のショーを行った。昨年9月末のパリではプレフォールを披露したが、今回はオンシーズンにショーを行う本格的なシーナウ・バイナウ。下火の発表形式に新たに取り組む理由は定かではないが、ショーと店頭をリンクさせたことで顧客やファンが多く訪れた。

 登場したのはウェスタンとパンクの要素をミックスした強いルック。ウェスタンシャツやパイソンのブルゾンに、張りのあるフリルのミニドレスやミニスカートの軽快なスタイリング。そこにスパイクが刺さったチョーカーやメタルのキューブヒールが光るロングブーツ。鳳凰(ほうおう)を描いたプリントやジャカードのシリーズも目を引いた。

マルケス・アルメイダ

 ヴィクトリア・トマスもウェスタンシャツがキーアイテム。ウェスタンシャツやサファリジャケットといったここ数年の定番アイテムを、ジグザグのヨークやヘムで独自の表情に変化させた。ジグザグヨークにフリンジを飾り、フレアスカートのヘムはハンカチーフ状に。

 布の動きが一層誇張されて、メンズライクなアイテムがフェミニンに変化する。ギンガムチェックやストライプ、小花柄でほっこりとしたムードに仕上げた。

ヴィクトリア・トマス

 ダウェイは、パリで初めてショー形式で見せた。グレンチェックやグレーフランネルのコートにスーツを合わせたトーン・オン・トーンのスタイルは、ゆったりとしたシルエット。セーターには恐竜のアップリケ刺繍や、爪跡のようなジャカード柄でヘムが裂けてフリンジになったディテールが描かれる。

 自身が飼っている猫をモチーフにした柄が毎シーズンの特徴で、今回は、セーターの編み模様のなかに猫の顔を潜ませた。グラフィカルなストライプのシャツドレスは、タックで身頃にゆがみとドレープを取り入れた。ダウェイ・スンは、パリのクチュール組合学校を卒業後、「ジョン・ガリアーノ」や「バレンシアガ」で経験を積み、17年春夏にコレクションをスタート。ここ数年はパリ・ファッションウィークの協会が主催する展示会で発表してきた。

ダウェイ

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