【ミラノ=小笠原拓郎、青木規子】19~20年秋冬ミラノ・コレクションにパッデッドやキルティングのアイテムが広がっている。ボリュームシルエットは昨秋冬のトップトレンドだが、この秋冬も形を変えて登場している。ボリューム感は控えめで、キルティングを強調したものや他の生地と部分的に切り替えて使う傾向が見られる。
(写真=ドルチェ&ガッバーナは大原広和、ヴェルサーチェはブランド提供)
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ヴェルサーチェはパンクのムードを背景にしながら鮮やかな色を組み合わせて見せた。たくさんのゴールドの安全ピンが入った招待状を持って会場に着くと、巨大なゴールドの安全ピンのオブジェが置かれている。
破れたセーターにスラッシュとチェーンのディテールのドレスなど、服にもパンクの要素が取り入れられる。とはいえ、パンクのエキセントリックな主張というよりも、色とディテールを組み合わせた華やかな雰囲気に仕上げた。ヴェルサーチェらしい鮮やかな柄のキルティング地をテーラードジャケットの背中や袖に切り替えていく。
ニットドレスにはブラトップのようなハーネスを重ねるなど、ハーネスやビュスティエディテール、ランジェリードレスなどのセンシュアルなラインもいっぱい。ニルヴァーナのミックスを背景に、香水瓶のプリントやビジュー刺繍のドレス、Vの文字を刺繍したコートなど鮮やかな色をのせたアイテムを揃えた。
「マイケル・コース」と同じグループの傘下となって最初のレディスコレクションだったが、商品からはその路線に大きな変化はないように感じられる。今後どのように事業を展開していくのか注目だ。
ドルチェ&ガッバーナは、フェミニンなエレガンスを背景にしたコレクション。メンズテーラードのコートやタキシードといったアイテムに始まり、サテンとレースを組み合わせたドレスやファートリミングのトレーンドレスへと続く。テーラードスタイルやシチリアを思わせるブラックドレスはアイコンのようなもの。30年代から60年代までの様々な要素をミックスして女性のエレガンスを描いたという。
たしかに今、エレガンスに焦点を当てるのは時代の流れに合っている。しかし、問題はドルチェ&ガッバーナがプレタポルテのコレクションをどう位置付けているのかにある。あるときはミレニアル世代を使ったインフルエンサービジネスの舞台、あるときはイタリア賛歌のグラフィック。かつてのようにプレタポルテで最新の美しさや価値観を提起するわけではなくなっている。ブランドのDNAにイタリアンエレガンスがあることは百も承知だが、それを今、改めて表現する意味やその現代的価値観に絞らないと冗漫に見えてしまう。