【ミラノ=小笠原拓郎、青木規子】19~20年秋冬ミラノ・コレクションは、ミリタリーやメンズテーラーリングなどのマスキュリンな要素を取り入れたスタイルが広がっている。ローデンクロスやヘリンボーンなどのアウター素材を使いながら、フェミニンに収めるのがポイントとなる。スクエアショルダーの強さとウエストシェイプの利いたシルエットのコントラストも見られる。
(写真=大原広和)
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プラダのショー会場は1月のメンズと同じ四角い空間。スポンジのクッション材のような凹凸の床にわずかな明かりが置かれている。秋冬はマスキュリンな要素をフェミニンな中に閉じ込めるプラダらしいコレクションを見せた。
ショーの初めはブラックのシリーズ。ブラックドレスやブラックコートはシルバーの留め金やダーツで絞ったシルエットで、ミニマルな中にぎゅっとキュートな魅力を散りばめる。フラワードレスにはコサージュや立体的な花の刺繍をのせて平面から3Dへ花が展開していく。ミリタリーグリーンのナイロンアイテムやナイロンのボマージャケットも、ウエストシェイプやバックドレープでフェミニンなフォルムに。ヘリンボーンなどのメンズアウターの生地をエレガントなドレスにのせる。白やブルーのクリスプタッチのシャツにレースをかぶせたドレスもいかにもプラダらしい。カラフルな花柄のドレスも、どこか毒を秘めたムードを伴う。硬質な音からディズニー映画のサントラ、レディーガガやコールドプレイのクラシックバージョン、ツインピークスの音楽。様々なジャンルの音の断片がつながれ、コラージュされていく。その音と同じように、様々な要素をミックスしながらもきっちりとプラダらしい強さとロマンティックが共存する。
2月とは思えない暖かな日差しが差し込むスケルトンのテントで、ダニエル・リーによるボッテガ・ヴェネタの初のショーが行われた。パッデッドレザーやキルティングレザーをベースにしたバイカースタイルとデコルテを意識したセンシュアルなドレスが揃う。チェーントリミングのセーターやメタルパーツでフロントを留める変形ラップスカートなど、メタリックなディテールがアクセントとなる。ミリタリーディテールのセーターも、ドロップショルダーにすることでフェミニンに。
アイコンのイントレチャート(格子状にテープを編んでいくテクニック)は、ジャケットやスカートに使われる。ブランドの背景にあるレザーのテクニックを生かして新しいボッテガ・ヴェネタを描こうという意図はわかる。実際にマスキュリンなバイカーブーツと襟元を開けたセンシュアルドレスのコントラストは今までの客層とは異なる市場に向けたもの。ただ、以前のコレクションと比べると、繊細さに欠けるようにも思える。