市井の人々に焦点を当てる デムナ・ヴァザリア

2017/06/27 04:30 更新


 【パリ=小笠原拓郎】どうやら18年春夏メンズのビッグトレンドは、スポーツミックスとなりそうだ。ラグジュアリーブランドからストリートまで、あらゆるゾーンでスポーツを取り入れたスタイルが広がっている。

 トラックスーツはもう当たり前。ダイビングやサイクリング、登山など様々なスポーツを背景にしたアイテムを組み合わせる。ただし、スポーツスタイルはもう飽和状態。その中にどれだけオリジナルの強いデザインを取り入れられるかが問われている。


ヴェットモン

 デムナ・ヴァザリアは今、市井の人々に興味があるのだろうか。ヴェットモンのパネル写真のプレゼンテーションは、街中で撮影したヴェットモンを着る人々のスナップで見せている。

 「アンブロ」のリメイクスウェットを着るおじさんやスリーブレスのGジャンを重ね着するおじさん、ブラックドレスを着る妊婦といった写真が並ぶ。リアルクローズのバランスを変えるヴェットモンだからこそ、モデルが着るよりも街中のスナップに収められることのほうが映える。今の時代、ファッションコンシャスでありすぎるよりも、そこから距離を置いた街中の人々の中でファッションを表現することのほうが新鮮に見える。そんなことを考えさせるプレゼンテーション。

ヴェットモン(パネル写真、小笠原拓郎写す)

ヴェットモン(パネル写真、小笠原拓郎写す)

ヴェットモン(パネル写真、小笠原拓郎写す)

ヴェットモン(パネル写真、小笠原拓郎写す)

バレンシアガ

 その考え方はバレンシアガにも共通するのであろうか。デムナがテーマにしたのは「父親の休日」。オーバーサイズのジャケットは使い古してポケットが大きく開いてしまったディテール。そんなジャケットを着た父親が子供を抱いて登場する。ポロシャツやラガーシャツもオーバーサイズ。クリーニングに出してビニールに入っ戻ってきた状態のまま着るといったスタイルもある。相変わらずのコンセプチュアルな作りだが、今回のコンセプトは製品段階で果たして美しく仕上がったのだろうか。

 着古して体になじんだ服の持つ魅力も分かる。ライダーズジャケットやデニムにはそんな魅力があるだろう。しかし、よれよれのオーバーサイズのジャケットにその着古したものの持つ魅力はあるのだろうか。もちろん、美しさの尺度は一つではない。しかし、父親の使い込んだ愛着のある服というエモーショナルなコンセプトが、この服なのかと考えると、どうもその仕上がりに納得がいかない。今シーズン限定で販売するというキッズのラインにオーダーが殺到することを考えると、その商才の巧みさには驚かされるのだが。

バレンシアガ(写真=catwalking.com)




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