17~18秋冬NYコレ、トランプ政権にメッセージ

2017/02/15 06:58 更新


 【ニューヨーク=小笠原拓郎、杉本佳子通信員】トランプ大統領の誕生は、ニューヨークのデザイナーたちにもさまざまな影響を与えている。おおむねアンチ・トランプで、いくつかのブランドがメッセージを込めたショーをした。マイノリティーの権利を擁護する主張や女性らしさを改めて考えるといった動きが出ている。

■アルトゥザッラ ルネサンスを背景にクラシックムード

Altuzarra Fall Winter 2017 New York Fashion Week Copyright Catwalking.com 'One Time Only' Publication Editorial Use Only

Altuzarra Fall Winter 2017 New York Fashion Week Copyright Catwalking.com 'One Time Only' Publication Editorial Use Only

 苔(こけ)で作った巨大なオブジェを置いた会場で、アルトゥザッラがこれまでよりもぐっとクラシックな方向にシフトした。ルネサンス期の絵画からイメージを広げたというコレクションは、ぺプラムディテールやフィット・アンド・フレアのシルエットをベースに女性らしさ強調する。ぺプラムジャケットのスーツ、フィット・アンド・フレアのコートといったアイテムにファーの襟やパールの飾りがアクセントとなる。

 ボリューム感のあるケープも上襟にファーを使い、パールのトリミングとコード刺繍のトッグルで存在感を際立たせる。フラワージャカードやベルベットなど、重厚でクラシックな素材感を生かしたドレスも多い。そんなスタイルをモダンに見せるのが、パール飾りのブーツや、わずかに差し込まれたモーターサイクルパンツ。ビジュー刺繍をたっぷりと重ねたフラワードレスでショーを締めくくった。

 

■プロエンザ・スクーラー

Proenza Schouler Fall Winter 2017 New York Fashion Week Copyright Catwalking.com 'One Time Only' Publication Editorial Use Only

 プロエンザ・スクーラーは、斜めに布を巻きつけた形状と深い前合わせ、ウエスト部分を曲線的にカットオフしたデザインがベースとなる。量感のテーラードコートは深い前合わせとともに、ジップとタイポグラフィーテープを飾る。レザードレスもベルトをぐっと絞ってフロントの深い前合わせを強調する。

 シアリングのバイカージャケットは、サイドで留めるほどの深い合わせ。一方、ドレスは体にらせん状に布を巻きつけたような生地使い。ウエストをサイドで曲線的にカットアウトしたドレス、曲線的に布を流したドレスもある。カーブのカットアウトの生地を重ねて切ることで、透け感や重なり方で変化を作る。ここ数シーズンの中では、やりすぎずにシンプルに収まったイメージ。

■3.1フィリップ・リム

3.1 Phillip Lim Fall Winter 2017 New York Fashion Week Copyright Catwalking.com 'One Time Only' Publication Editorial Use Only

 3.1フィリップ・リムは、素材のコントラストと色の組み合わせで見せた。ピンクのビーバータッチウールのコートはドロップショルダーのボリューム感。揚柳やジョーゼットの風合いのドレスは裾にバイアスのギャザーを寄せてヘムラインの動きを強調する。フィッシュネットのトップにはレザーのビュスティエトップを重ね、ダウンベストやダウンコートは、黒とクラインブルーのコントラストを際立たせる。パンツスーツは、ハイウエストの部分を折り曲げたディテール、ボア襟付きのデニムジャケットはそのまま着丈を伸ばして大きなデニムドレスへと仕立てられた。色を軸に新しいロマンティシズムを目指したコレクション。

■ザディグ・エ・ヴォルテール

ザディグ・エ・ヴォルテール


 ザディグ・エ・ヴォルテールは今年でブランド設立20周年を迎えるにあたり、ニューヨーク・コレクションに初参加した。スポーティーでポップな楽しいコレクションだ。ポップアートを思わせる明るいカラーブロックを、シャープなレザーのスキニーパンツやデコンストラクトなセーターに入れていく。シルクジャカードのスリップドレスもビビッドな配色で、セクシーというより可愛い感じ。ウィンドーペーンのパンツスーツにはチェリーピンクの透けるブラウスを合わせ、伝統的なスタイルを崩す。

 

■プラバル・グルン

Prabal Gurung Fall Winter 2017 New York Fashion Week Copyright Catwalking.com 'One Time Only' Publication Editorial Use Only


 プラバル・グルンはひもを編み込んだような装飾をコートやブルゾンに飾り、ニットトップはバルキーな編み地を部分的に切り替えて量感を作る。パンツスーツにロープのオーバーベルトを巻くなど、ロープは一つのアイコンとなる。ウエスト部分のくるみボタンを外してアシンメトリーに素肌を見せるドレス、刈り込みや象眼で装飾を加えたファーコートといったアイテムも目立つ。しかし、それより気になったのは、何人か交ざったぽっちゃりモデル。女性らしさのありようは一つではないというメッセージを込めたコレクション。

■ミリー

ミリー

 大統領選の結果に衝撃を受けたというミッシェル・スミスは、心が折れながらも強く立ち向かう女性をイメージした。以前のレディーライクとはだいぶ違う。ブラウスやセーター、ドレスに引き裂かれたディテールを入れる。マニッシュなコートや黒のレザーのワイドパンツで、強さとダークな気分を加えた。

■クリーチャーズ・オブ・ザ・ウインド

Creatures of the WInd Fall Winter 2017 New York Fashion Week Copyright Catwalking.com 'One Time Only' Publication Editorial Use Only

 コミュニティーとアイデンティティーがテーマ。「叫ぶ人々」と名付けた群衆の柄をジャカードで入れたトレンチコートで幕を開ける。てかてか光るワックス加工のカーフスキンのボマージャケットやモトクロスジャケット、デコンストラクトの手法を入れたビンテージのコートやジャケットも登場した。

■ジェレミー・スコット

ジェレミー・スコット

 60年代末~70年代調に反逆的なトーンを加えた。巨大なキリストの顔や聖母マリアを、サイケデリックな表現にのせていく。バイカージャケット、スタッズをびっしりたたいたパンツスーツも。スエードをパッチワークしたミニドレス、ベルボトムパンツ、ミドリフトップなど70年代のアイテムが揃う。


(写真=catwalking.com、ランディ・ブルック)



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