「ヨウヘイオオノ」を手掛ける大野陽平は、8月23日から全国公開される映画『箱男』の登場人物3人の衣装をデザインした。原作は安部公房が73年に発表した同名の小説で、人間が一切の帰属を捨て去り、存在証明を放棄した先にあるものを描く。安部本人から「娯楽にしてくれ」と託され、27年前に一度制作に取り掛かった石井岳龍監督が映像化を実現した。
きっかけは、全体の衣装を担当したスタイリストからの依頼だ。大野は、箱男になった「わたし」をつけ狙うニセ医者、誘惑する看護婦、完全犯罪に利用しようと企む軍医の衣装を任された。クリエイションの強みにするフォルムと素材のアプローチを生かし、「制服」の概念とその境界線を探るように表現した。
大野は「箱男がどういった世界観の映画なのか想像もつかないまま、素材感や仕様のリクエストを自分なりに解釈しながら作成していったが、撮影現場にうかがった時に不思議とそれまでのやりとりが腑に落ちた。どこかヨウヘイオオノにも通じるものが、現場にも映画全体にも感じられ、思い入れのある作品になりそう」と話す。