NYでぼろをテーマにした展覧会(杉本佳子)

2020/03/12 06:00 更新


ニューヨークのジャパンソサエティーで、「BOROテキスタイル:継続性の美学」展が始まった。会期は6月14日まで。コロナウイルス感染が広がる中で行われたプレスプレビューだったが、多くのアメリカ人メディアが来場した。

サステイナブルへの関心が高まる機運に合致したテーマだからだろう。ぼろは過去の手工芸品に留まらず、川久保玲、山本耀司、三宅一生に大きな影響を与えた時期があり、今も刺し子や裂き織のテクニックを取り入れる若いデザイナーがいる。

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ニューヨークでも最近、プラバル・グルンやアリス+オリビアのステーシー・ベンデットなど、端切れや残布を一部使ったことをアピールするデザイナーがいる。ぼろが大衆の生活の中から必要に応じて生まれたことも、ファッションのデモクラシーに共感する人々に刺さるかもしれない。ぼろのコンセプトが再認識され、服のお洒落な再現にインスピレーションを与えるならば、日本人としても嬉しいところだ。

前半は、アメリカで初公開となるぼろ収集・研究の第一人者である民族研究家、田中忠三郎氏の個人コレクション。同氏は青森県出身で、1960年代に収集を始めた。刺し子や裂き織などを入れた丹前、パンツ、足袋など、個人コレクションの数は50点以上に及ぶ。寺山修司監督、黒澤昭監督らが作品制作のために借り受けたこともあるコレクションだ。青森では「どんじゃ」と呼ばれる羽織は16キロくらいあり、貧しかった人々が裸で家族と共にその下に入ってからだを温めたという。

生地は、コットンの前に使われていたヘンプに焦点が当てられている。寒い東北は綿花の栽培に適さず、昭和初期まで麻布を使い、その端切れを接ぎ合わせ、限られた資源を無駄にせず、繰り返し仕立て直していた。

どういうところでぼろがつくられたかわかるように、青森の雪景色をバックにぼろをまとった人々の写真も展示されている。中央の什器には75点の小物が、裏側も見やすいように展示されている。ヘンプの残布を継ぎ接ぎした手袋や足袋などだ。

最後の部屋では、現代のファッションとアート作品におけるぼろの影響を検証。日本のデザイナー以外では、ニューヨークのデザイナー、スーザン・チャンチオロの作品が多く展示されている。スーザン・チャンチオロは、かつてはニューヨークファッションウイークで前衛的な作品を見せていたデザイナー。2015年以降は、ニューヨークのホイットニー美術館や海外の美術館に出展している。

ロサンゼルスベースのデザイナー、クリスティーナ・キムのつくった非常に繊細な蚊帳もある。クリスティーナ・キムは30年以上にわたり、リサイクルや再利用をコンセプトとした創作活動を続け、端切れを使用しエコを追求したデザインをしてきている。

(Photograph by Richard Goodbody)

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89年秋以来、繊研新聞ニューヨーク通信員としてファッション、ファッションビジネス、小売ビジネスについて執筆してきました。2013 年春に始めたダイエットで20代の頃の体重に落とし、美容食の研究も開始。でも知的好奇心が邪魔をして(!?)つい夜更かししてしまい、美肌効果のほどはビミョウ。そんな私の食指が動いたネタを、ランダムに紹介していきます。また、美容食の研究も始めました(ブログはこちらからどうぞ



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