フルクサスと日本人女性芸術家たち(杉本佳子)

2023/10/17 06:00 更新


ニューヨークのジャパン・ソサエティーギャラリーで、展覧会「アウト・オブ・バウンズ フルクサスと日本人女性芸術家たち」が始まった。フルクサスに参加した久保田成子(1937~2015年)、オノ・ヨーコ(1933年生まれ)、斉藤陽子(1929年生まれ)、塩見允枝子(1938年生まれ)の4人の日本人女性アーティストたちに焦点を当てた展覧会だ。会期は来年1月21日まで。

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フルクサスは1960年代初頭に始まった前衛的芸術活動で、ラテン語で「流れる小川のように連続的に移動すること、通り過ぎること」を意味し、流動性と不確定性を重視した。絵画や彫刻といった従来の芸術形式を避け、映画、音楽、パフォーマンス、出版、大量生産されたオブジェの流用などを表現手段に取り入れると共に、日常生活のささいなものや行為に芸術的価値をもたせることを特徴とする。発祥の地はニューヨークで、初めてパフォーマンスをしたのはドイツ。ニューヨークのキャナルストリートには「フルクサス・ショップ」があり、カードゲームをつくって安価で売っていたという。

斉藤陽子(たかこ)は、音を重んじる表現が印象的だ。トイレットペーパーの紙筒をたくさん下げたドレスは、それを着てパフォーマンスをすることで音を生み出す。たくさんのポケットに何か言葉を書いた紙を入れたドレスは、観客に取り出してもらって抑揚をつけて読ませ、それを「オペラ」と呼んだ。

斉藤陽子のドレス

ボタンや豆などを中に入れたチェスの駒は、振るとそれぞれ異なる音を出す。ケースに入っているのはMOMAに展示されているオリジナル作品で、その手前はキュレーターの由本みどり氏がボストンで2003年にDo-It-Yourself Fluxus 展を開催した時に、斎藤陽子の了解と指示を得て友人と共に制作したレプリカ。来場者たちが駒を好きにさわったり動かしたりしていいようにしている。

斉藤陽子のチェス

オノ・ヨーコは、ステージに座っている彼女の元に観客が1人ずつやってきて、着ている服を少しずつ切り落としていくパフォーマンスアート「カットピース」をニューヨークでやった時の動画を見せている。その時にカットした布切れを保存していた人がいて、その布切れも展示されている。アグレッシブな人は攻撃的なまでに服を切り裂き、穏やかな人はピースフルにカットしていく。自分は人を映す鏡になるという考えでオノ・ヨーコは臨んだとのことで、なるほどと思った。

オノ・ヨーコの「カットピース」(右側のスクリーン)

オノ・ヨーコから借りた「バッグピース」も、来場者がかぶって好きなように動いていいようになっている。来場者たちはオノ・ヨーコの白いチェスでも遊べる。フルクサスの精神を感じられる演出だ。

オノ・ヨーコのバッグピース

久保田成子(しげこ)は、セルフポートレイトのビデオを袋のようなオブジェに組み込んだ「ビデオ彫刻」の第一人者だ。久保田成子はまた、膣に柄の部分を挿した刷毛で床に敷いた紙にしゃがみながら絵を描いた「ヴァギナ・ペインティング」でフェミニストアートの先駆者になった。

久保田成子のビデオ彫刻

塩見允枝子(みえこ)は世界のいろいろなところで1つのイベントを同時に実施し、何をするかの指示をいろいろな人に送り、その報告や結果をまとめる活動をしていた。現在は大阪に在住する。

塩見允枝子がイベントの結果をまとめた世界地図

日常生活に存在する音や所作を取り入れ、誰でもアーティストになれるという考え方は、民主的であることを重んじる昨今の時代の空気に通じるものがある。フルクサス運動が始まった1960年代初めは、ベトナム戦争の真っ最中だった。奇しくも今、世界で2つの戦争が行われている。不穏な時代の中で身近なものにアートを見いだし、自由な発想で表現し、誰でも参加できる手段で発表していったアーティストたちの心意気には、何か学べるものがあるように感じた。

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89年秋以来、繊研新聞ニューヨーク通信員としてファッション、ファッションビジネス、小売ビジネスについて執筆してきました。2013 年春に始めたダイエットで20代の頃の体重に落とし、美容食の研究も開始。でも知的好奇心が邪魔をして(!?)つい夜更かししてしまい、美肌効果のほどはビミョウ。そんな私の食指が動いたネタを、ランダムに紹介していきます。また、美容食の研究も始めました(ブログはこちらからどうぞ



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