リトゥンアフターワーズ(山縣良和)はこのほど、ブランド創設10周年を記念して、東京都庭園美術館で18年春夏コレクションを見せた。会場となったのは夜の庭園美術館の屋外。そこにニュース番組のテーマ曲が流れ、ニュースキャスターに囲まれたモデルが現れる。ショーはニュース番組の映像のように、さまざまなシーンが切り取られるように現れ消え去っていく。
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リアカーに少女を乗せて運ぶ軍人、焼け焦げた生地で作る大きな傘、ひつぎを引く男、千羽鶴のドレスに続く学徒出陣。戦争とそれにまつわるストーリーを幻想的に描いていく。ストーリーテリングを生かしたコレクションの見せ方は、山縣が得意とするところ。その点で彼は東京でも稀有(けう)な存在だ。しかし、そのストーリーテリングの手腕とともに、プロダクト(製品)としての服のあり方がいつも問われることになる。
透け感のブルーのセットアップ、ピンクとイエローのドレスを優しく包むエアパッキンのケープ。このあたりのルックはプロダクトとしても存在感を放っている。しかし、ショーのルックの中で、プロダクトとして心に響く服が少ないようにも感じる。もちろん、つまらないリアルクローズを作ることなど求めていない。物語のようなショーの中では限られるが、展示会に行けば、プロダクトとしての創造性あふれる服がもっとたくさん並んでいるのであれば、それはそれで良いのかもしれない。
山縣のショーを作る才能は確かだが、ファッションデザイナーとしてプロダクトとしての服をどう売るのか。10年を機にさらにそこに挑んでほしい。服が売れ、売り上げが大きくなるとファッションデザイナーには次のステージが待っている。今まで、使えなかったような素材やオリジナルの技術を提供する人たちと出会うことができる。そんな次のステージで才能を生かせるところにたどり着けることを願っている。
(小笠原拓郎、写真=加茂ヒロユキ)