「ブランドごとに選ぶ素材が違う」「これといった色柄の傾向はない」。素材見本市で各社に「反響があった素材は」などと聞くと、そうした答えが返ってくる。トレンドがないのが今のトレンドなのだろうか。
背景にはコロナ禍以降、人々のファッションに対する価値観が大きく変化したことがあると見る。家ナカ時間の増加で着飾る楽しみが減り、趣味が多様化した一方で、インフレで生活は厳しさを増し、ファッション消費は低迷した。コロナのパンデミック(世界的な大流行)が沈静化した今も、世界で戦争や紛争、自然災害が絶えず、人々の不安は日に日に募っている。混沌(こんとん)とした時代の中、自身の内面や本質を見つめ直し、安らぎを求める動きが顕著だ。服には、着心地の良さが欠かせなくなった。
ファッションテキスタイルも、目に見える華やかさより、快適さを大事にする向きがぐっと強まった。意匠性を付与する「表面変化」は、凹凸による肌離れ性もポイントだ。流れは機能重視と言えるが、ファッションは本来、夢や高揚感を与えるもののはず。遊び心のある物作りで人々の心をまた楽しませてほしい。
(麻)
