尾州産地の匠(たくみ)と呼ばれる職人に取材を申し込んだところ、間に入ってもらっていた方から「年末に脳梗塞(こうそく)で倒れ、入院しているため難しい」と返信がきた。
その職人は4万点以上の生地の生産や販売に携わり、ジャカード織物を得意とする匠だ。尾州に訪れるブランドに生地を熱心に伝える姿や、産地で働く若者に「悩んどらんか」と気に掛ける場面を何度も見たことがある。
記者も基礎的な生地設計を丁寧に教えてもらった。強い方言がむしろ心地よく、残したメモがその人の声でそのまま再生される。
産地の職人の高齢化が進んでいる、ということはあちこちで聞き、理解していたつもりだった。ただ、具体的に「あの人の技術が途絶えてしまうのでは」と感じた時、強い焦燥感を抱いた。ある関係者は「産地の技術を守れるか、消滅してしまうかはここ数年が勝負」と話す。
記者にできることは、職人の声を一つでも多く聞き、文字で残し、伝えることだろうか。一日も早い回復を心から祈っている。
(坂)
