今夏、都市部に出店したあるレディスの新業態にマネキンが1体も無かった。いまやスマートフォンを通してモデルやインフルエンサーの着用画像がいくらでも見られる時代。美しくてかっこいい画像に毎日触れ、いざ服を見てみようと店に行った時に「無機質なマネキンの存在が客をがっかりさせているのでは」という仮説のもとでのチャレンジだという。
スマートフォンの中の世界がどんどん進化するなかで、リアルの表現が追いついていないということには同感だ。特にローティーンブランドが不振なのは、バーチャルの世界がデフォルトな彼女たちの目線と、実店舗のギャップが大きいことも関係しているのではと考える。
アフターコロナで実店舗の魅力が見直されているが、販売員のホスピタリティーによるものが大きい。ここで改めて、店頭表現をゼロベースで考え直してみることも必要ではないだろうか。
冒頭のレディス店はマネキンを使わなかっただけでなく、出入り口を低くしたり、テーブル什器の高さを足元まで下げるなど、従来のアパレル店ではご法度とされるような実験を随所に散りばめていた。功を奏すか、注目したい。
(金)