《視点》糧となる経験

2023/09/05 06:23 更新


 今年の夏の全国高校野球は神奈川の慶応が107年ぶりに優勝して幕を閉じた。エンジョイ・ベースボールをモットーに、笑顔の絶えない戦いぶりは多くの人の印象に残っただろう。

 同校の目的は高校野球の新しい姿につながるべく「常識を覆す」ことだった。個人的には新興校が言いそうなことを伝統校が公言したことに考えさせられた。長い歴史を持つからこそ、過去の間違った考えや方法が積み重なって常識と化してきたことを知り、それを打破する必要性を感じたのではないか、と。

 低迷は常識にとらわれることで起こるようにも思える。過去の成功体験をもとに常識化された行動原理では、時代の変化に対応できない。成功体験は思い出に過ぎず、現在と未来に必要なのは失敗体験の方だろう。

 慶応の森林貴彦監督の「甲子園優勝を人生最高の思い出にしないように」と、決勝で敗れた仙台育英の須江航監督の「人生は敗者復活です。この経験を次に生かします」。どちらの言葉も深く刺さるものがある。

(樹)



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