決算説明会で必ず話題になるコストアップの話。素材メーカーの決算を見ると、市況の回復に伴って売り上げは回復基調だが、原燃料高や急激な円安によるコストアップが利益を圧迫している。これまでも地道なコストダウンを重ねてきたが、もはや「一企業努力では限界」というコメントがこの1年は特に目立った。
先日開かれた素材メーカーの決算説明会。「売り上げは計画通り順調に推移する見通しだが、利益は計画に届かないだろう」と述べ、理由は「染色整理の加工委託先で今年はさらに10%の値上げ要請がある」という。染色整理工程を支える企業を取り巻く事業環境も厳しい。そもそも国内の加工スペースもタイト。加工を担う企業の業績が悪化し、存続が危うくなれば「サプライチェーンの維持が難しくなる」ため、「値上げの要請には基本的に応じる」構えだ。
別の素材メーカートップも「ある程度の企業体力があれば、価格転嫁するのにタイムラグが発生して苦しいというレベルだが、小さい企業だと資金繰りに窮しかねない」と指摘。一方で最終製品について「値上げしない」と表明する企業もある。サプライヤーの理解を十分に得ているのならいいが、そうでなければ社会的に問題なことはもちろん、コストうんぬんの前に供給網が崩れかねない。
(嗣)