《視点》習慣と悪癖

2022/01/25 06:23 更新


 多くの日本人は宗教に疎く信心に厚いと言われる。神社に詣で、キリスト教式の結婚式を挙げ、仏教式の葬式を執り行うなどは他国ではなかなか見られない。昨年の正月はコロナ禍のもと、密を避けて初詣客が減ったが、今年はどの神社も回復傾向にあった。多くの人が変えざるを得なかった習慣を懐かしみ、多少の安堵(あんど)を理由に元に戻したということか。

 多くの習慣は反復で生まれ、繰り返すうちにそもそもの行動理由を忘れがちになる。それは、スポーツなどでは考えるより先に反応する機敏さとなり、最善の結果を生むこともある。だが頼り過ぎれば、変えることに勇気を必要とする。判断を誤れば環境に対応できず、おいてけぼりを食らう例も少なくない。

 隆盛を誇った場所や建物が、荒野や廃墟になったものから学ぶのは風情だけではない。長く続く伝統は同じことの繰り返しだけでなく、幾度も革新を重ねてきたものだ。コロナ禍で生活が変わると言われて久しい。新しい年を迎えたことを機に、変化した環境のもと、習慣が悪癖となっていないかを確かめるのも悪くない。

(樹)



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