少し前にEC発レディスブランドの経営者やディレクター3人を取材した。いずれも媒体や世間で「DtoC(メーカー直販)」とまとめられるブランドだ。影響力のある人が自ら広告塔となり、SNSで情報を発信しながら服や雑貨を売るイメージが強いが、少なくとも私が取材したブランドはそれと異なる。
3人のうち一人はアメリの黒石奈央子CEO(最高経営責任者)。同社は設立8年を迎えるが、創業時から増収増益を続け、消費者の支持を得ていることが実績からもうかがえる。
取材で黒石CEOはこう言った。「私たちの本気度は他のDtoCブランドと違う。客観視しています」。レディス市場で売れているのは黒石CEOの影響力も大きくある。しかし、彼女と話をしていると、憧れや共感、服のデザイン性だけではなく、自らの思いの強さがあってこそ消費者の心に響いているのだと、主観ではあるが感じる。黒石CEOの語りはいつもよどみなく、軸がぶれない。
他の2ブランドも同様の印象。あくまでも彼女たちが売りたいのは服。おしゃれや服作り、好きなことへの純粋で熱い思いがブランドの魅力の一つになり、SNSを基点に拡散されている。DtoCだから売れるのではない。その人が何をしたいのか、何を売りたいのか、なぜこれが良いと思うのか。消費者はそれを知りたいのだ。
(麻)