年末のテレビの特番を見ていて、はっとさせられる場面に出くわした。「日本は世界で何番目にお金持ちか」という質問で、日本のGDP(国内総生産)順位を街頭インタビューしていたのだが、20代の若者たちが「20位」「46位」「80位」と答えていたのだ。
正解は米国、中国に次いで3位だ。彼ら、彼女らの無知を言いたいのではない。また、バラエティー番組のことでもあり、面白おかしく不正解を切り取って紹介したのだろうとも思う。けれど日本が先進国上位ではないと思っている感覚こそ、ある意味正しいのではないかと感じた。
バブル崩壊以降、日本は賃金の上がらない国になっている。現在の賃金はOECD(経済協力開発機構)平均をずっと下回って、米国のおよそ半分、韓国よりも下。生まれて以来、〝失われた30年〟を生きてきた若者にとっては、芸能カルチャーやスマートフォンから見える韓国の方がよほど豊かに見えても無理はない。
豊かさを実感できずに育った若者たちがファッションに高いお金を使うなんて感覚もないだろう。いま、繊維・ファッション業界は原料高が直撃し、どこも価格転嫁に苦慮している。遠回りなようだが、賃金の上がる国にしていくことも大事だろう。低迷しているとはいえ、いまだ世界3位の経済力があるのだから。
(恵)