混乱した日々が続き、気づけば今年が終わろうとしている。約2カ月に及ぶ臨時休業に始まり、商品の納期遅れや店舗運営の在り方など様々な対応に追われ、先行きが見えない不安と苦しい状況との闘いだった。
混沌(こんとん)とした情勢は業界に大きな課題と気づきを与えた。一つは、この間も叫ばれていた過剰生産、大量廃棄だ。シーズンごとに有力小売店を対象に行うアンケートでも、こうした問題意識のもと、「適時適品適量」の声がより強まった。
もう一つは「わくわく感」。レディスの21年春夏展示会や日常の取材の中で、この言葉を本当によく耳にする。その思いの背景には生き残りへの危機感があり、同時にそうした切迫感からファッションの本来の役割に立ち返ったとも言える。
「まずは自分たちがわくわくして物作りや提案をしよう」。21年春夏コレクションでは楽観主義や快活な女性像を描くブランドも多かった。揺らぐ気持ちを前向きに変えられる時、それは非常に大きなパワーになると思う。厳しい冬を越えた先にどのような景色が待っているのか。わずかな希望でも忘れず、これからの新しい時代に夢を膨らませたいものだ。
(麻)