《視点》文脈と編集

2020/12/10 06:23 更新


 ある栄養ドリンクのCMでは、ここ数年ほど高校生に扮した若手女優が曲を歌うのが恒例だ。今年の曲は、思わず口ずさんでしまう可愛らしさがある。てっきり新曲と思っていたが、音楽番組内の紹介で、男性アーティストが96年に出した曲のカバーだと知った。

 紹介を続けて見ていると、CMにはないパートが流れ、印象の違いに驚いた。CMでは女性が自分自身を励ます曲だと思っていたが、全体の歌詞を読むと、男性が女性に明るく振る舞うことを求める曲に思えてくるのだ。歌う人やタイアップする商品といった文脈で曲の印象を自分で補完していた。CM制作サイドによる編集が曲の印象を大きく変えていたことも実感した。是非は別として、その手腕に感心した。

 12月上旬にナイキジャパンのCMがツイッターで物議をかもした。現代日本で抑圧される人にフォーカスした内容だが、複雑に絡むセンシティブな要素を、外資企業が日本文化に合った文脈で広く受け止められやすく編集するのは至難の業だ。誰もがいっそう盛んに発信する今こそ、文脈と編集に注意して、受け手としての鑑識眼と、送り手としての技術を磨かなければいけない。

(稜)



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