《視点》スタイリスト感覚

2020/08/19 06:23 更新


 店に入って「短く」で済む気楽さから、もう何十年も通う理髪店がある。同じ短くでも季節やアレンジが入り毎回微妙に違うが、信頼しているので文句はない。雑誌などを参考に髪形を注文する客にも髪質や頭の形を見て「少しこうしたら似合うよ」など会話を進め仕上げている。

 美容室もだが、理髪店は低価格チェーン店の台頭で競争が激しい。通っている店は培ってきた信頼や技術によるアレンジ力、和ませる会話などで、満足感が高いから通いたくなる。

 専門店も同じではないだろうか。「客の好みを把握して、品揃えや提案に生かす」とはよく聞くが、それだけでは生き残れない。たんす在庫は同じような商品であふれ、ワクワク感が続かないからだ。

 都心のある路面店の決め手は、スタイリスト感覚の提案力。客の好みにはあまりこだわらずに、着用シーンに合わせて輝いて見えるコーディネートを提案。戸惑う客もいるが、周りの「いつもと違うね」などの好反応が信頼を培う。客の魅力を引き出し、心を満たしてくれる店は強い。

(伸)



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