デパートの思い出は、おそらく5歳になったかならないかぐらいに始まる。駅前の、市で初のデパートが繁盛していたのだろう。その話題に大人たちが沸き立っていた。次は小学生のころ、隣の市のデパート上階にある本格フランス料理店での食事は、映像としてはっきり覚えている。その次は山形市の大沼だ。買ってもらったのは、サイドにチロリアンテープのラインを配したジーンズ。それまで見たことのないもので、はいて行くと小学校中の注目を集めた、気がした。
中学、高校になると都会のデパートへ。銀座で、一緒に来られなかった母へのプレゼントに父が買ったトカゲ革のハンドバッグ、家族で出かけた神戸の三ノ宮で買ってもらったデザートブーツの記憶は、今もキラキラ輝いている。80、90年代は一人で好きなブランドの店に通いつめた。親が亡くなったときの香典の返礼も、広い売り場を歩き選んだ。
人生の節目、社会の変化の象徴として百貨店が思い出にあるのは、記者の年齢ぐらいまでか。これから5年、10年後に残る記憶は、どんなものになるだろうか。
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