冬の定番高級素材といえばカシミヤだ。モンゴルや中国の山間部に生息するカシミヤヤギから採れるもので、使われるのはふわふわで柔らかいうぶ毛。うぶ毛が抜け落ちる5月ごろに熊手のようなもので一頭ずつすいて収穫するのが一般的だ。
しかし、今そんなカシミヤ産地でも人手不足が問題となっており、効率化を求めて一気にバリカンで太い毛ごと刈ってしまうやり方が出てきているという。原料に衣料に適さない毛が増えれば、太い毛を取り除く整毛といった後の工程に負担がかかる。収穫時期も暖かくなるまで待たなければいけないため、納期は今よりも遅くなるだろうと、カシミヤを使うある素材メーカーの社長は嘆く。
人手不足は物流や販売員だけでなく、もはや世界の繊維・ファッション産業全体の問題であり、安価な賃金しか提供できなければ高い方に人が流れていくのは当然ともいえる。サステイナブル(持続可能)な産業にしていくためには、物作りの仕組みを維持していくことは必要不可欠。エコ以外にも解決しなければならない課題はまだまだ多い。
(騎)