《視点》アンチテーゼ・ホテル

2019/06/25 06:23 更新


 ブランド事業の運営や雑貨ODM(相手先ブランドによる設計・生産)を主力とした企業を運営する30代経営者が、ホテル事業に乗り出した。

 ビジネスパーソンや旅行者を対象にした都内のこのホテルは、既存ビジネスホテルをリノベーションした。コンセプトは「新しい発見」。室内には世界中から最上級の寝具類、バスアメニティーをセレクト。テレビなどはなく、部屋に入るとミニマルなしつらえに心が落ち着く。1人1泊1万~1万6000円。ホテル併設のレストランは新進気鋭のシェフによるイノベーティブ・フレンチが夕食で1人3万円。立体駐車場を改築したギャラリーでは、現代美術を軸に多様なプログラムを予定し、海外アーティストの作品を展示、販売。ホテルラウンジでは有力バリスタが入れるコーヒー、ノンカフェインのハーブティーなどを提供する。

 この若手経営者は「ファッションビジネスを通じて見えてきたのは、この国の文化度の低下。安かろう悪かろうな商品やサービスが広がりすぎて、良質なものを評価する基準がなくなった。このホテルはそんな社会に対するアンチテーゼ」と言う。彼の試みは成功するのか。今後のファッション市場の行く末がこのホテルから見えてきそうだ。

(民)



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