「ネットで便利に物が買えるようになった代わりに、手触りや臭いを感じることが買い物から排除されてしまった」と懸念するのは、あるレイングッズメーカーの社長。「キャンプがはやっているのは、常に効率を求める時代観の一方で、自然に触れたいという野生の欲求が働いているから」とも指摘する。
決して、ネットが悪だということではない。購入する物や生活スタイル、価値観でネットとリアルどちらを好むかは分かれるし、複数の販売チャネルを賢く使い分ける消費者も多い。
「丁寧な暮らし」が一つの市場トレンドになっているように、商品本来の良さを知ってもらう動きも一段と強まっている。
服飾雑貨メーカーが19~20年秋冬、カシミヤやウールで作った首周り品に力を入れている。「情報が交錯する世の中で、手で素材とその魅力を感じてほしい」という。デジタルの良さを生かしながら、商品の本質的な価値を見極める嗅覚(きゅうかく)や感性は失わず、研ぎ澄ましていたいものだ。
(麻)