「非日常を味わえる」。世界コスプレサミットの取材で多くのコスプレーヤーがコスプレの魅力をそう語った。米国やスペイン、ベトナムから来た、代表コスプレーヤーも同様の答え。好きなキャラクターになりきり、ストレスフルな日常からひと時でも開放されたいと考えるのは、どうやら万国共通のようだ。
注目したいのはコスプレーヤーの情熱。今年の日本代表コスプレーヤーは年間100万円を衣装に費やすらしい。実はこれ、年収の半分。運送ドライバーをしながら、コスプレ仲間と一緒に住んで家賃を浮かすなど住居費と食費を削り、できる限りコスプレにお金と時間をかけている。
果たして、今のファッション業界がこれほどの熱狂をエンドユーザーに提供できているだろうか。カップラーメン生活を送ってでも、「どうしても欲しい」と消費者の心を奪う服を生み出していた時代もそう遠くない昔にあったはずだ。
「消費者の志向が多様化し、服の優先順位が下がった」「最近の若者は服を買わない」とよく耳にする。事実だろう。でも、熱狂を生み出せない、業界の言い訳でもある。
(森)