YKKの吉田忠裕会長に取材する機会を得た。ご存じのように同社はファスニング事業と窓を扱うAP事業の二つの主力事業を持つ。ファスナーでは世界のYKKとして知られ、APもこの間、ブランド化して定着してきた。
だが窓事業を進めるにあたっては相当な抵抗があった。従来、窓はサッシ事業の一環で、半完成品の状態で建材流通店に出荷し、建材流通店でガラスとサッシを組み合わせて窓にして建設現場に納入していた。だが、この方式では責任を持って品質保証し、環境に対応した窓を作りにくいという欠点があった。同社は窓を完成品の形で生産し、事業化していく新しいビジネスモデルを組み立てた。
もちろん、窓事業はサッシ事業と並行して行い、建材流通店とはパートナーとして取り組んでいくことを表明したが、建材流通店の仕事を奪うものと誤解され、「2代目の造反」とまでマスコミに書かれたこともあった。建築工業製品を扱う意味合いを持つAPは十数年を経て消費者にも認知されるようになった。
時代の変化の中で求められるビジネスに果敢に挑戦し、確固たる信念を持って進めたことで、新しい事業領域を切り開いた。不可能と言われてきたこと、タブー視されてきたことに挑み、やりきる姿勢で臨むことが次代を作る。(英)