《視点》ファッション脳を売る

2017/05/17 04:00 更新


 先日、ファッション関連のトークイベントを聞いていた際、老年の男性客が語った感想が印象的だった。いわく、「80年代のファッションは、世の中全体をリードし、新しい時代の姿を提示するような力を持っていた。今のファッションにはそれがない」

 確かに、コモディティー化が進んだファッションには、かつてのような神通力は無い。ファッションの代わりに、今はインターネットサービスやデジタルガジェットが、時代の先を読む巫女(みこ)の役割を担っている。

 しかし、かつての影響力は失ったとはいっても、ファッション的な視点や感性は、今も他産業にとって刺激的なものであり続けているとも感じるのだ。不動産や自動車産業を取材した時に、彼らがファッションのマーケティングや顧客との接点の作り方を参考にしていると気付いた。今やファッションよりもはるか先を走っているように感じる飲食産業も、ファッションのノウハウを取り入れることで、成功を生んでいる。

 服そのものを売るとともに、異業種にファッションの脳みそを売るコンサルティング的なやり方に、ファッション企業が今後生き残る道があるように感じる。(五)



この記事に関連する記事