自社ブランドの販売とEC運営主力のシーザライト取締役で、ファッションユーチューバーとしても活躍する潤間赳郎(うるまたけお)さん。20年には自身のブランド「オープニング・アクト」を立ち上げた。アパレル企業役員、ユーチューバー、ブランド運営と多彩な活動で得たノウハウを、今後は自社の若い世代に伝えていきたいという。潤間さんのこれまでの歩みと展望を聞いた。
(高塩夏彦)
伝え方に差つける
――これまでの活動は。
元々はシーザライトのバイヤーやディレクターという背景を生かし、ファッションにまつわる様々な情報を発信していました。ファンがついてきたこともあり、社内ベンチャーとしてブランクという会社を立ち上げ、自分のブランド「オープニング・アクト」をスタートしたんです。
3年ほどはファッション初心者の悩みに寄り添う、ベーシックな服を企画し、動画で紹介して売るという、ありふれたスタイルでした。ただ、服好きのユーチューバーやインフルエンサーが立ち上げたブランドは世間に山ほどある。ファッション業界にどっぷり浸かって生きてきた自分にしかできないやり方はないものかと、2年ほど前から模索し始めました。
――どのように変化をつけた。
オープニング・アクトは素材やディテールに凝ったブランド。以前からその説明には注力していましたが、発信の場をインスタグラムやX(旧ツイッター)にも広げました。単に媒体を増やすだけでなく、各SNSの客層をマーケティング目線で分析し、伝え方に差をつけています。
例えば、使う単語の専門性も媒体によって変えています。日々、服作りに関わっているからこそ、マニアックな単語や素材のうんちくも、伝える相手に合わせてかみ砕くことができる。これが業界人の強みです。
結果的に、主販路の自社ECにユーチューブ以外のSNSからの流入が増えて新規客が獲得できました。
率先してトライ
――足元の商況は。
24年度の売上高は約1.4億円。来期は2億円を見込んでいます。企画から販促までほぼ一人で仕切っているため、利益率は高いです。ただ、拙速な成長は求めていません。今のファンとの距離感が保てる年商3億円くらいを目標にしています。
ブランドを5年続けた結果、初期からのファンがファッション初心者から服好きに〝育った〟のが大きな変化です。ここ1~2年はシンプルな物よりも、色やディテールに凝った商品を増やしました。「アンブロ」など社外との協業も増やしています。価格は上がりましたが、発信で付加価値を伝えているため、納得して買ってもらえています。
――今後は。
オープニング・アクトはシーザライトの〝リトマス試験紙〟だと考え、様々な施策を実験的に行ってきました。おかげで動画やSNSでの発信の仕方のノウハウが蓄積されてきました。これからは若い社員や、支援しているインフルエンサーブランドへ、それを伝えていきたいです。
ユーチューブなどで顔と名前を出した発信は続けます。ユーチューバーはブランドが一定の規模になると、ブランディングのために本人が名前を出さなくなることが多い。でも、デザイナーブランドは、作り手をあまり隠さないじゃないですか。ユーチューバーブランドもそうするべきだと思うんです。自分がその前例になれたらなと思います。