ヨーロッパブランドの販売1(坪内隆夫)

2014/12/02 13:41 更新


私はJAY PROJECTで日本のメンズブランドを海外で販売するほかに、ヨーロッパのブランドの販売をもしています。

もともとレディースのデザインをやっていたという事もあり、扱うのはレディースブランドが多く、日本人という事もあって日本のマーケットの担当をする場合が多いです。

日本で販売をした経験が無いので、日本の販売のやりかたをそれ程良くは知らないのですが、ヨーロッパと日本とではやはりかなり大きな違いがあると思います。


 


お手伝いさせていただいているのはミラノのあるショールーム。はじめはショールームを日本に紹介するという事で始めたのですが、手伝い始めた2008年頃はまだロシアの景気も良く、特にこのショールームではロシア人スタッフや外部スタッフもいて、かなりのウェートでロシアに販売していました。

当然、ショールームで販売しているコレクションもロシアの市場にあった物が多く、日本とはかなりかけ離れたテーストの物が好まれるので、日本に向けての販売はなかなか大変でした。テーストのあわない物はいくらアピールしても販売に繋がらないので、その後日本に合いそうなブランドだけにしぼって販売する事にしました。

それからロシアのマーケットは悪くなり始め、ここ最近ヨーロッパの多くのショールームではアジアのマーケットに向けて販売し始めています。これは新興国も多いのでこれからもどんどんマーケットが広がって行くと思います。

同じアジアの中でも日本の市場は特に繊細な物が受けるので、他の国とのテーストの違いは多少ありますが、かなり体格の良い女性が多く、キッチュな物が好きなロシアのマーケットにあわせたコレクションよりも、かなり販売しやすくなりました。

海外から見た日本の市場は日本人にとっても気になると思いますが、以前のように高い商品をたくさん買うマーケットでは無いけれど、それでもある程度コンスタントに購入してくれ、支払いもきちんとしてくれる良いマーケット、と誰もが思っていると思います。

このショールーム以外にスウェーデンのスニーカー、ポーランドのレディースシューズ、ANTONIO MARRASのメンズとセカンドライン、その他のブランドの販売をさせていただいています。 

ANTONIO MARRASのメンズの販売はアジアが中心ですが、他の地域でも新しい販売先を見つけてくるとそれに対してのコミッションを支払ってくれます。中にはナイジェリアのお客さんもいます。

その他のブランドは、アジア以外でも販売先を見つけるとコミッションが入ってきますが、オーダーコンフォメーション時に30%のデポジットを、そして納品前に残金をすべて支払って貰ってからの出荷、という支払い条件だとヨーロッパでは中々商売するのは難しいです。


 


日本と海外との大きな違いは、海外では仕事が分業化されていて、日本のようにブランド内に営業がいるのではなく、ほとんどのメーカーでは外部のセールスエージェント等に販売を委託しています。

また、セールスキャンペーンの時期も日本のようにいつから始まっていつ終わったのか分からないほど長い物ではなく、ファッションウィーク期間を中心に販売しているので、その時期にしっかり販売しておかないと、次のシーズンまで販売するチャンスを逃してしまいます。

日本に海外のバイヤーを呼び込むのが難しいのは、はっきりとしたファッションウィークが決まっておらず、みんな好きな時期にプレゼンテーションやファッションショー、展示会をしているからです。海外のバイヤーが一度にまとめてコレクションを見る事が出来ない、という事もその大きな理由の一つにあると思います。 

最近ヨーロッパでは、これまでのコレクションの他にプレコレクションと言ってメインのコレクションが出る1、2ヶ月前にもう一つコレクションを紹介しているブランドが多くあります。

オーダーを閉める時期が早いので、当然デリバリーも早く出来ますし、ブランドとしてもバイヤーに早くバジェットを使わせる事が出来ます。特にランクの高いお店は早いデリバリーを望んでいるので、最近ではメインよりもプレコレクションの方に力を入れているブランドも多いです。

ヨーロッパ、特にミラノ、パリでの販売のメリットは、海外からも多くのバイヤーがファッションウィークに集まってくるので、国内のマーケットが悪くても、今ホットなマーケットに向けて販売する事が出きると言う事です。これはかなりのメリットではないでしょうか?



坪内隆夫 つぼうちたかお 東京モード学園デザイン学部卒業後渡英、1年後に渡伊。デザイナーとして活動をはじめ、ミラノにてオーダーショプ「TAKAO MILANO」をオープン。2004年2月から2007年9月まで年に2度、ミラノ市の協賛を得て、ミラノファッションウィーク開催中に新人デザイナーを中心とした展示会UPSIDE MILANOを主催。その後、ミラノのショールーム、ファッションガイドブックへのコンサルタントを行い、2012年1月のPITTI UOMOから日本のメンズブランドのヨーロッパでのセールスプロモートをするプロジェクトJAY PROJECTを開始する。



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